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豊岡移住者インタビュー ~井坂浩さん編~

こんにちは! 城崎温泉で起業して4年目、ライターの西垣です。

「地方に移住したら畑をしたい」
そんな声をよく聞きます。
ですが実際にやり始めても長く続かない人が多い、とも聞きます。
一言で「畑」と言っても

・想像を超える重労働
・隣の畑の人から草抜きの方法で怒られる
・いろんな人がいろんなアドバイスをくれるのでどれを信じれば良いかわからない

 
実は農作業そのものよりも近隣の人たちとの関係に悩む人もいるそうです。
農業の悠々自適なイメージを覆す人間関係の重要性…。
 
さて、今日ご紹介するのは豊岡市に移住をしてきて、地域の人に見守られながらゆっくりと畑を始めた人です。
舞台演劇の照明家で、豊岡演劇祭のコーディネーターでもある井坂浩さん。
この春、豊岡にやって来たばかりの中で地元の人たちとも積極的に交流を持ち、 移住を機に始めた農業も地元の方のいろんなアドバイスを受けながら進めておられます。
農業が続けられない人が多い中、なぜ移住間もない井坂さんが地元の人と一緒に楽しそうに農業が出来ているのか? その秘密を探ってみたくなり、インタビューを申し込みました。
 
移住の事、 農業の事、 そして演劇祭の事、
井坂さんのお話から見えて来たのは、コミュニケーションをお互いに取ろうとする 移住者と地元の人たちの光景でした。

2020年春、井坂さんは豊岡市に移住しました。

井坂さんは舞台や劇場が仕事場。

職場は豊岡市にある江原駅から徒歩2分、
今年完成した「江原河畔劇場」という劇場で舞台照明の仕事をしている井坂さん。
移住前は東京に暮らし「こまばアゴラ劇場」を中心に活動していましたが、所属する「青年団」の豊岡市への移転に伴い移住。青年団としての活動に加え、豊岡市の地域おこし協力隊として演劇を通した地域活性に取り組んでいます。

地域おこし協力隊については「Hostel Act 豊岡ゲストハウス&スタンドバー」のOKDこと岡田さんが記事で書いてくれていますのでそちらをご参考に。

2020(兵庫県豊岡市)地域おこし協力隊メンバー紹介!

晴れてくれない 豊岡 ~暮らしについて~

インタビュー当日は雨。日本海側の地域は1日の中で目まぐるしくお天気が変わる

西垣 :今年の4月に引っ越しをされてから3か月。住んでみたからこそわかる豊岡市の印象や東京との違いはありますか?

井坂:雨が多いですね(笑)今日も雨ですもんね!(取材は7月上旬)
移住してから畑を始めたんですけど「雨の日は畑の水やりに行かなくていいよ」って言われて「そうなのか良かったー!」と思っていたのですが水やりすぎじゃないかな?ってぐらい雨ですね。
そういえば梅雨って明けました?っていうかいつ入りました?なんだかずっと梅雨な気がします。

西垣:雨の日も多いですが曇りの日が多いジメジメとした天候は日本海側特有ですね。

井坂 :だいたいの中学生が鞄と傘をセットで持ってる事に驚きました。
僕、大学卒業するまで茨城で、豊岡移住する前は東京いたんですけど雨ってたまにしか降らないんですよ。
豊岡は降り方が独特ですよね、東京はちゃんと降るんですけど、豊岡の雨って止んだと思ったらまた降り出すんです。天候が何回も変化して1日中は晴れてくれないんです。

西垣:豊岡の天候は時間帯ですぐに変わります。兵庫県北部、日本海側の天気の特徴ですね。

井坂:日本海側って来た事無くて、豊岡市は大阪から来ても車で約3時間かかりました。(サービスエリアが好きですぐ寄っちゃうからだそうです。)

兵庫県といえば神戸、大阪、京都のような京阪神をイメージするんですが、神戸と日本海側では生活の雰囲気が違うと感じました。
自然がすぐ近くにあってとてものどかな印象ですね。
ただ、城崎の旅館街に関しては、観光客も多く都会の様な雰囲気があります。
豊岡はエリアによって、まちの雰囲気がまた違うのでそれも面白いです。

実は、移住前にも城崎国際アートセンターにはよく来ていたので「城崎」はなんとなく知っていたのですが、その城崎が「豊岡市」の一部だとは知りませんでした。

西垣:豊岡市は1市5町が合併して出来たまちです。ほかにも自然豊かな但東町や海に面した竹野町、日高町や出石町もあります。文化圏としては関西寄りになります。

井坂:TVをまだ買ってないので、上沼恵美子さんも「痛快!明石家電視台」もまだ観ていませんし兵庫県民が愛するサンテレビデビューもしていません。TV番組を観られる環境になったら真っ先に観たいと思っています。

移住先で日役(ひやく)と呼ばれる近所での奉仕作業に参加される井坂さん。

西垣:先日の記事で紹介されていた畑では、どんな野菜を育ててるんですか?

井坂:但東町に畑を借りました。
この前のオンライン会議中、メンバーに畑を見せようと思って(スマホを持って畑に)近づいたんですが電波が入りませんでした(笑)。
畑を始める時に「どうせ演劇祭で忙しくなるから」と、ほったらかしでも出来る野菜を地元の人に教えてもらいました。
かぼちゃとスイカ、さつまいもだったんですが全然ほったらかしに出来ませんでした(笑)。
虫が多くて草刈りも大変です。
草刈りの様子は豊岡に移住したら〇〇を振り回していた件。でも書いたんですがやはり文明の利器は凄いですね。
電動草刈り機なら動画取る暇も無く草刈り終わっちゃいました(笑)
ところで、豊岡って卵おいしくないですか?豊岡のスーパーの卵は都会のスーパーの卵よりおいしい。「豊岡卵おいしい問題」です!

西垣:普段から気にせずに卵を食べていますので味の違いを意識した事は無かったのですが、確かに豊岡の卵は美味しいですね!
卵と言えば但東町に卵かけご飯が名物の「但熊」さんがありますよ!卵も売ってますし豊岡にお越しいただいたのならぜひ一緒に行きましょう!ところでスーパーマーケットが遠かったり都会に比べて不便に思う事はないですか?

井坂:豊岡ってちょうどいい田舎だと思います。コンビニもちゃんとあるしATMもあります。
そんなに人多くないしとても住みやすいです。不便に思う事は無いですね。

「演劇のまち、豊岡。~仕事について~」

舞台の照明を操作する井坂さん

西垣:さて、新型コロナウイルスの影響で開催が危ぶまれていた豊岡演劇祭2020ですが安全対策を取りながら規模を縮小し、開催される事が決まりましたね。

井坂:豊岡市の主要産業である観光と連動し9団体11作品の公演が予定されています。青年団の新拠点となる江原河畔劇場(同市日高町日置)に加え、城崎国際アートセンターや市民会館など5会場で行われ、周辺会場の「フリンジプログラム」は23団体がさまざまな場所で同時多発的に行い、豊岡市全体が演劇祭の会場になっています。

西垣:僕たちも新しいものが始まるっていうワクワクがありますし、「チケットを買いました!」という声も聞いています。

井坂:演劇祭は、予定されていた規模よりは縮小しますが市民の皆様に関心を持ってもらえる事はすごい、嬉しい!単純に嬉しいです!
イベント自体が当初の予定通りには出来ないじゃないですか。演劇の稽古も始まりますし、舞台の図面は上がってきてますが、自粛期間が長くて作品に触るのが久々すぎて。江原河畔劇場にも慣れていない事が多くわからないから戸惑ってますが楽しいです(笑)

城崎、神鍋……などなど豊岡の各地で公演(フリンジ)をする予定ですが劇団さんと一緒に場所探しもしています。

西垣:僕達市民はどんな風に楽しんだら良いですか?演劇を初めて見るという豊岡の人もたくさんいると思いますが。

井坂:価値観を押し付けたくないので、ものの見方は演劇もそうだけど人それぞれだから、映画だとカット割りだけど演劇は「はいどうぞ、好きな所を好きなように見て」って個人的には思っています。豊岡演劇祭は“祭り”ですからね、とにかく楽しんでもらいたいです。
「面白かった」って言ってもらえたら嬉しいです。

移住者として人との距離を縮めたいと思っている事。

演劇祭に関わる地域おこし協力隊の皆さん

西垣:豊岡市民になられてご近所付き合いとかはいかがですか?

井坂:移住して思うんですけど、いろんな人と仲良くしたいですね!畑を始めるといろんな人達の視線を感じます(笑)

西垣:それよく分かります。僕も誰か新しい人が来ると遠くから見ちゃってます。県民性かどうかわからないけど自分から声かけるのは恥ずかしいんですよね。僕もそうなんですけど、話しかけられるのを待ってるタイプの人が多いのかもしれません。

井坂:畑の近く(但東町)にツネオさんとカッちゃんっていうおじさま達がすごい良くしてくれて。
おじさん達、最初は「なんだよ」みたいな感じだけど畑の事やいろんな事を教えてくれる。
カッちゃんは米しか作らないらしく「野菜の事はわからねぇ」とか言いながらですけど(笑)
すごい良い人だな~って。だからもっと距離を縮めていけたらなって思ってます。

井坂さんの畑づくりと演劇祭の仕事を通して感じたこと

畑作業を通して、さっそく地域の方と交流を始めている井坂さん。
豊岡での新しいライフスタイルを楽しんでいる様子は地元出身の僕としても嬉しい気持ちになります。
井坂さんは演劇祭の準備を進めながら活き活きと畑をされていますが
移住者さんや地域の人たちがお互いにコミュニケーションを取ろうとしている事に新しい暮らしや畑をうまくやる事のヒントがあるのではないでしょうか?
井坂さんは自分から「いろんな人と仲良くしたい」って思ってくださってますしまちの人も受け入れようとしていらっしゃいます。

移住先を決めるには環境も大事ですが、何より人の要素が大きいのではないか、と今回のインタビューで思いました。

最初はどんな人が来たのか気になりつつも、
話しかけられるまで待っている地元の人は多いはず。
お互いの事を知る事で暮らしやすくなる、それは都会でも田舎でも同じ。
つまり当たり前の事なんですよね。

私は豊岡で始まる演劇祭も同じ事が言えるのではないかと考えています。
「演劇」という今まで関わる事の少なかったジャンルに、自分達から歩み寄る事でもっと豊岡を楽しめそうですね!

全国から演劇ファンやアーティスト、演劇の関係者がこのまちに集まる「豊岡演劇祭2020」は、2020年9月9日(水)開幕です!

https://toyooka-theaterfestival.jp/

この記事を書いた人

西垣崇史

兵庫県城崎温泉出身。高校卒業後に大阪で映像を学ぶ。
ITインフラが地方でも普及した事で”都会と地方の距離が無くなった”と感じUターン。
市内企業の勤務を経て2016年に「人が集まる場所を作る」をテーマに個人事務所を設立し独立。
飲食と宿泊機能を持つ書店「BookStore iChi」の経営の傍ら株式会社EVAの代表取締役を務める。プロデュースした短編映画「桜が咲く頃 交わした約束は、」がマドリード国際映画祭で外国語最優秀短編映画賞を受賞。

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