多様性を受け入れるまちを目指して…
こんにちは!
豊岡生まれ豊岡育ちで就職を機にUターンした、市民ライターの大岸です。
最近は、豊岡にたくさんある美味しい飲食店のテイクアウトにはまっています。
さて、かなり時間が経ってしまいましたが、2019年の10月28日に、豊岡市の中貝市長と、ある方の対談を聞かせていただく機会がありました!
対談のお相手は、タレントでエッセイストの小島慶子さんです!
お二人の対談を聞いて学んだことや考えさせられたことを、聞いたお話と一緒にこの場で共有できたらと思い、記事を書くことにしました。
小島さんは、みなさんご存知のとおりテレビなどのメディアでもご活躍されていますが、ご自身の家庭では、一家の大黒柱として家計を守っておられます。
ハラスメントをなくす取組などにも参加されており、中貝市長と「ジェンダー平等」について対談していただけることになりました。
豊岡市は、“多様性を受け入れ、支え合うリベラルな気風が満ちているまち”を目指し、ジェンダー平等実現のための取組を始めていて、まずは、“職場”のジェンダーギャップ(性別による格差)の解消に取り組んでいます。
田舎の小さな自治体が、本気でジェンダー平等を目指すって、すごくないですか?
豊岡市がジェンダーギャップの解消に取組み始めた頃の様子は、井垣さんの記事「豊岡市の次の大きな目標。すごいよ!」に分かりやすく書いてありますので、ぜひお読みください。
豊岡の現状
対談では、まず、中貝市長が豊岡市の現状について話をされました。
他の地方自治体と同じく、豊岡市も人口減少が続いています。
市のデータによると、高校卒業後に大学進学などで市外に転出する若者が多く、大学等卒業に伴い就職の時期に転入するのは男性は5割くらい、女性は半分の2.5割(4人に1人)くらいということが分かっています。
なぜ男性に比べて女性が戻ってこないのか、豊岡市が目を付けたのが「ジェンダーギャップ」です。
実際、豊岡市では、男女の給与格差や雇用形態などでジェンダーギャップが存在しています。
豊岡市の男女別・年代別の平均給与収入額(2017 年)※豊岡市ワークイノベーション戦略より
市役所含め、事業所の女性管理職が少ないのも現状です。
ちなみに、豊岡市役所の管理職のうち、女性は9.3%…。市民の半数以上が女性なのに、このままでいいとは思えません。
女性の育児休業取得率も、全国は81.8%、豊岡市が47.9%(豊岡市ワークイノベーション戦略より)。
女性は豊岡では暮らしにくいのでは…と疑ってしまっても仕方がない数値が出ています。
さらに、日本の国としても、2019年のジェンダー・ギャップ指数が153カ国中121位という結果…。
※グローバル・ジェンダー・ギャップ指数:世界経済フォーラムが毎年発表している、世界男⼥格差指数。政治・経済・教育・健康の4部門について、男⼥にどれだけの格差が存在しているかを分析してスコア化したものの順位。
私自身の豊岡での実体験でも、男女の扱いの差を感じたことはあります。
子どものころから、親族や地区の行事の時、いつも女性がお茶を入れる光景に違和感を持ち続けていました。母がいないときはその仕事が私に回ってきて、頑なに拒否していました。笑
親から洗濯や炊事などの家事を手伝ってと言われたときも、男兄弟は言われず、「何で私だけ」とよく愚痴を言っていたのを覚えています。
私の親世代(もうすぐ60歳くらい)は、夫か妻のうち1人が働けばある程度の暮らしができる時代だったわけで、性別による役割分担意識が当たり前で、そういう時代を生きてきたのだから仕方がないんだろうなと思います。
ただ、私たち世代の感覚は違って(もちろん人によるとは思いますが)、
結婚したとたん、女性だけが「家でごはん作ってるん?」と聞かれたり、
男性が「大黒柱にならないといけないから大変だね」って言われたり、
そういった発言に違和感がある、という声をちょくちょく耳にします。女性からだけでなく、周りの同年代の男性からも。
共働き世帯が多く、家事も一緒にすることが割と当たり前の私たち世代の言動で、変えていけることがたくさんあるのではないだろうかと思います。
一歩ずつ、前へ
豊岡の実態を語りつつ、中貝市長が言い切った言葉が印象に残りました。
「ジェンダーギャップは人口減少につながり、まちの存続が危うくなります。そして、社会的・経済的損失でもある。ただ、本当に一番問題なのは、公正さの欠如です。」
まちづくりの会議に参加するのが男性ばかりだと、せっかく良いアイデアを持っている人がいても最初から母数が半分になってしまいますし、企業の人手不足が続く豊岡で、せっかく採用した社員が、女性であるという理由だけでスキルを身に付けるチャンスがないのは、将来的に会社としても損だと説明されました。
正直、自分が所属する組織のトップからこういった発言を聞けるのは、とても頼もしく感じます。
発言だけでなく、豊岡市役所も市内の一事業所として、職員の働きがい・働きやすさを高める取組を進めています。その一つが、男性職員の育休取得促進です。
取組むまでは、なんと1人しか取得者がいなかった男性職員の育休。1年の間に、6人の職員が2~3週間ずつですが育休を取得しました。
民間事業所でも取組は進んでいて、“女性も働きたい職場”への変革に取り組む、豊岡市ワークイノベーション推進会議に参加する中田工芸株式会社では、社長が1か月育休をとられたそうです!社長自ら取得してくれれば、社員も言いだしやすいですよね!
このように、一歩ずつですが、豊岡は確実に前進しています。
小島さんの提案
さて、市長の対談相手 小島さんは、夫妻と子ども2人の4人家族で、現在オーストラリアで生活されています。
最近、「夫がよくできた専業主婦化している」と、小島さん。
食事の後、子どもに食器をシンクに運ぶところから洗うところまでやってほしいのに、“夫さん”が「自分がやった方が早い」と全部してしまうそうです。
専業主婦を体験すれば、誰でも同じように思ってしまうかもしれませんね。
その話の流れで小島さんから、「ジェンダーギャップ解消のワークショップに演劇を取り入れるのはどうか」という提案がありました。
豊岡市では、“深さをもった演劇のまちづくり”を進めていて、公立学校の授業や市内企業の管理職向けワークショップなどには既に演劇的手法を取り入れています。
一家の大黒柱、はたまた専業主婦を演じた時、初めて気付くこともたくさんあるんだろうなと想像できます。
ジェンダー平等に向けても、「演劇」がキーワードになるかもしれません!
ジェンダー平等が人を自由にする!
小島さんのお話の中で、とても心に残る部分がありました。
1995年の就職氷河期に働き始められた小島さん。
当時の女子学生は「働き続けてもいい。25歳くらいで寿退社してもいい。結婚してもしなくてもいい。子どもは産んでも産まなくてもいい。無限に選択肢がある、あなたたちは一番恵まれている女子だ」と言われ、小島さん自身もそれを信じていたそうです。
「そのとき、男子の前にどういう選択肢があるかは考えたことがなかった。41歳になって、自分が一家の経済を全部賄うようになり、彼らの前には最初から一本しか道がなかったことにやっと気がついた」と小島さん。
「市長、子どものころに『学校出たら働いてもいいよ?』って言われました?」
即座に「いいえ」と答える中貝市長。
女の人は「働いてもいいよ。働くのがカッコイイんだよ。もう働かなきゃやばいよ」、中には、「働くなんてとんでもない」と声をかけられたのに対し、
男性は「学校を出たら働くのが当たり前。働いたらやめちゃいけない。出世を望まなきゃいけない」、また、「妻と子どもを養って当たり前」と言われていたそうです。
小島さんは続けます。
「夫に対し、『男なのに働いてないなんて』と言ってしまったこともある。夫を傷つけたと思うし、自分も苦しかった。」
自分が大黒柱になることで、いつの間にか、稼いでいる方が偉いという価値観に染まってしまったそうです。
「女性の中にシンデレラ幻想(男性に自分より稼いでほしいと思う気持ちなど)が生き残っている限り、本当の意味でジェンダー平等の社会を実現するのは難しい。若いうちから、稼ぎ続けるのは無茶振り、誰かが一方的に経済的な負担を強いられるのはしんどい、ということを、女性も知っておくことが大事」という意見もいただきました。
女性が「女だから…」と言われてきたように、男性も「男だから…」と言われてきたのだということ、自分も役割や立場が変わったときに、誰かを傷つけてしまう恐れがあることに、改めて気付きました。
対談後の取材陣との意見交換の際に、
「共働きであれば、パートナーが転職を考えられるようになるなど、選択肢が増える」というデータがあるという話もありました。
ジェンダー平等を進めることが、自分のパートナーを自由にすることに繋がると単純に考えれば、気楽に取組めるかもしれませんね。
小島さんが最後にこうまとめられました。
「『圧倒的に機会と準備が足りていなかった人たちに対して、より多くの機会と準備の手段や時間を与えれば、その人たちは安心して生きていけるよね』ってことが、おそらくジェンダーを考えることだと思う。それで、圧倒的な弱者におかれていたのが女性。女性の環境を改善することに伴い、男性の硬直的な働き方も変わっていけば……
最終的にはジェンダーのことを考える先には、『どんな人でも人生に何が起こるかは予想がつかない。状況が変わったとしても、そのとき自分が大切にしたいことを諦めずに生きていける社会を作りましょう』ということだと思う。」
2019年3月、中貝市長が国際会議の場で「豊岡市はジェンダー平等を目指します」と宣言してから、はや1年。
まだまだ時間はかかると思いますが、女だから、男だからとか言われない、
いずれは性別だけじゃなくて、年齢、障害の有無、国籍の違いなど関係なく、みんながみんなをひとりの“個”として見られるようなまちになればいいな……
そうなるように、自分たちができることをしていきたいと思います!