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私の好きな癒しの戸島湿地 vol.2

ハチゴロウ伝説

2002年8月5日、1羽の野生コウノトリが豊岡にやってきた。

8月5日にちなんで「ハチゴロウ」と呼ばれた彼は、

ミズアオイ咲き乱れる城崎の湿田を好み、

来る日も来る日もエサをついばんだ。

息を呑むような美しい光景だった…。

 

(ハチゴロウの戸島湿地パンフレットより)

豊岡市民なら誰もが知っているこのハチゴロウ伝説。

ハチゴロウが愛したこの湿地、どこにあるかは意外と知られていないのですが、

実は城崎温泉から車で約5分のところにあります。

多くの観光客で賑わう温泉街ですが、円山川を渡り川の対岸へやってくると

こんなに静かでのどかな風景が。

 

戸島湿地(としましっち)に行ってみよう!

温泉街方面から円山川を渡るには、この青い手すりの可愛い橋を通ります。

 

レトロな雰囲気の細い橋。

まるで水上をドライブしているかのようでちょっとスリリング。

(老朽化のため、建て替え工事が実施されています。)

橋を渡って左に曲がり、そのまま道なりに進んでいくと

右手にこの看板が。

ハチゴロウの戸島湿地

橋を渡って約1~2分で戸島湿地の管理棟に到着。

ここは私のお気に入りの場所で、遠方から友達が遊びに来た時は

必ず案内するスポット。

自称湿地ガールとしては外せない場所です。

 

湿地と言えばこちらの記事も。

私の好きな癒しの田結湿地

可愛い手作り看板がお出迎え。

なんと入場料無料です!

…ですが、環境保存のため、ご協力をお願いします。

協力隊の永瀬さん

ここに行くと出迎えてくださるのがこの優しそうな(実際優しい)お兄さん。

豊岡市地域おこし協力隊の永瀬倖大(ながせこうた)さん。

コウノトリのことに関して、どんな質問をしても優しく詳しく教えてくださいます。

市をあげてコウノトリを守る活動をしていることに深く共鳴し、

協力隊として移住してこられることを決めたそうです。

ついでにコウノトリ以外のプライベートな質問もしてみると…。

なんと私と同じ姫路出身の方でした!

こんな身近に姫路からの移住者がおられたとは驚きです。

勝手に妙な親近感が。

ようこそ飛んでるローカル豊岡へ。

 

戸島湿地のコウノトリペア

管理棟からは、望遠鏡で湿地にやってくる野鳥や

ここで暮らしているコウノトリの巣塔を見ることができます。

 

こちらは巣塔を特別な場所から撮影した現在の写真。

なんと3月末に卵が3つ確認され、4月末には

3羽のひなが誕生する予定なんだそうです!

まるで孫が誕生するかのように楽しみでなりません。

市内にはいくつかの巣塔がありますが、

現在各巣塔で抱卵や子育てが行われています。

ここ戸島の巣塔は卵が3つ。

卵の印が、孵化すると可愛いひな鳥の印に変わります。

巣塔の様子はライブでテレビモニターにも映し出されているので、

望遠鏡を覗かなくても巣の上の様子がよくわかります。

お父さんとお母さんが交代で卵を温めているそうです。

途中立ち上がって卵を足でころがしている様子がみられました。

まんべんなく温められるように定期的に動かすそうです。

この日はお父さんが抱卵担当。

なかなかのイクメンです。

別のコウノトリが!

…とその時です。

突然管理棟内がざわつきました。

事務所内におられた女性も双眼鏡を手に飛び出してこられました。

どうやらここのペアとは別のコウノトリが飛来してきたようです。

写真では見えませんが電柱の上にとまって休んでいます。

すかさず永瀬さんが望遠鏡で足輪をチェック。

コウノトリはそれぞれ、いろんな色の組み合わせの足輪をつけていて、

それで個体識別をしているそうです(下の写真が識別リストです)。

 

こんなにたくさんの組み合わせが。

飛来してきたコウノトリは、戸島湿地から車で15分ほどの所にある

豊岡市内の野上(のじょう)というところで暮らす雌のコウノトリでした。

一瞬でどのコウノトリかを見分けていた永瀬さん。

さすがです。

野鳥観察

さて私が好きな場所はこの先にもう一つ。

管理棟を出てすぐ先の湿地の上にある野鳥観察小屋。

 

湿地にはたくさんの野鳥が遊びにやってきます。

管理棟で双眼鏡をお借りして、子どもたちと一緒に野鳥観察へ。

観察棟の看板も手作り。

昔は湿地の水面上に浮かんでいましたが、

安全面の都合により今は固定されているようです。

観察棟からの景色がこちら。

季節によってはこんな景色も。

耳をすませば野鳥のさえずり。

しばらく時がたつのを忘れます。

サギ、カモ、ウ、ツバメ、トンビ等、いろんな鳥が観察できました。

 

 

前回訪れたときは、至る所で水面が激しくバシャバシャと波打っていました。

永瀬さんに聞くと鯉が産卵しているところだったんだそうです。

 

嫁殺しの田

城崎(きのさき)の語源は、黄沼前海(きぬさきうみ)

であるとされるほど、円山川下流域は低海抜の沼地が

広がっていたそうです。

湿田の耕作は大変な労力で「嫁殺しの田」とも呼ばれたほど。

この辺りでは重労働に悩まされていたそうです。

そこでこの湿地に土を盛り、乾田にする土地改良事業がスタートしました。

自然再生へ

ちょうどその頃、この湿地に頻繁に舞い降りて

餌をついばむようになったハチゴロウ。

その行動が、希少な生きものや植物にあふれたこの場所の

隠されていた魅力に気づかせてくれました。

残念ながらその後ハチゴロウは亡くなってしまいますが、

いろいろな人々の思いとともに、乾田になるはずだったこの湿田は

“ハチゴロウの戸島湿地”として生まれ変わることとなりました。

(ハチゴロウの戸島湿地パンフレットより)

幸せを運ぶコウノトリ

日常の暮らしのなかで時折、大空を優雅に舞うコウノトリや

田畑でエサをついばむコウノトリを見かけることがあります。

そんな時は子どもたちも「あっ!コウノトリ!」と言って

嬉しそうに教えてくれます。

なぜだか分かりませんが、なんとなく嬉しくて

その日はちょっといいことが起こりそうな気がします。

帰りに管理棟で可愛い手ぬぐいが販売されているのを見つけました。

“かこさとし”さんが描いたコウノトリの手ぬぐい。

福井県出身のかこさとしさんはコウノトリに特別な思い入れがあったそうです。

良く見ると手ぬぐいにはたくさんの生き物が描かれていて、

それをついばむコウノトリ。

自然や生きものに対する熱い想いが感じられます。

そして巣塔には偶然にも3羽のひなが…。

かこさとしさんの想いと共に、戸島湿地でもこの光景を

いつまでも絶やすことなく見ることができますように。

 

 

この記事を書いた人

桶生美樹

2000年10月、こども英会話の講師を辞めて魚市場で働く夫とミレニアム婚。生まれ育った姫路から大阪へと移り住む。2002年日韓ワールドカップ終了を機に、サッカーをこよなく愛する夫は大阪の魚市場を辞めて、実家が営む城崎温泉の魚屋を継ぐことを決意。夫婦で豊岡市へと移住することに。現在城崎温泉と日本海の美味しい魚にすっかり魅了され、魚介で四季を感じる暮らしをすっかり満喫中の3児の母。
(株)おけしょう鮮魚
お食事処 海中苑
☎0796-29-4832

http://www.okesyo.com/

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