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豊岡をマンガで伝える「ペント」編集長・岡村さんに会ってきた!

ローカルメディア「ペント」とは

▲ペントを紹介する岡村さん

「いや〜、取材なんてほとんどないんですよ」
そう言って、にこっと笑いながら迎えてくれたのが、フリーペーパー「ペント」の編集長・”おかむ”こと岡村さん。

「ペント」は豊岡や但馬の人やお店をマンガで紹介する、ちょっと変わった(そして面白い)媒体。営業や企画、ネームは岡村さん、作画は妻の”ゆかむ”さん。夫婦二人三脚で作る一冊には、地元の空気と人の魅力がぎゅっと詰まっています。

実際に読むと、登場人物の顔がリアルに似ていて微笑ましい。しかも1ページごとにコマ割りも工夫されていて、内容がコンパクトにまとまっていて読みやすく、まちに住む人たちの日常や思いを、ほのぼのとしたタッチの中に感じられます。

地域での日常の一コマを親しみやすいマンガとして描き、地域の魅力を読者に伝えるユニークな「ペント」。豊岡市のことを知りたい人にも手に取ってもらいたいローカルメディアです。

▲私も以前登場させてもらいました!

「マンガでまちと人の魅力を紹介したいと思った」

▲今まで発行された"ペント"

岡村さんは兵庫県新温泉町の出身。高校は豊岡、大学では大阪へ進学。

卒業後は印刷会社で製本加工の仕事をしつつ、パソコンやデザインを独学で勉強。資格も取って、その後は豊岡のウェブ制作会社へ。
「飛び込み営業ばっかりやってました。でもそのおかげでいろんな経営者さんやお店の人に会えて、“自分も経営してみたい”って思えたんです」

30歳で独立してホームページ制作を中心に仕事を始めたけれど、だんだん「自分が発信する媒体を持ちたいな」という思いが強まってきた岡村さん。

じつは昔から大のマンガ好き。子どものころから当たり前のようにマンガを読んでいて、ストーリーやキャラクターの世界にどっぷりハマっていたそう。豊岡市内には『ホタルノヒカリ』や『西園寺さんは家事をしない』を描いたマンガ家のひうらさとるさんも住んでいて、その存在も「マンガを身近に感じるきっかけになった」と振り返ります。

「5年くらい前からSNSで地域の人やお店を題材にしたマンガを描いてたんです。でも、紙のほうが手に取ってもらえる確率が高いなって」

こうして2023年、「ペント」がスタート。勢いがあるなあと感じるのは紙で配布するだけじゃなくて、今年の9月にはアプリ版もリリースしたこと。

ペントマンガアプリはこちら
https://app.pen-to.com/

 

岡村さんがいちばん嬉しいときは、やっぱり反応が返ってきた瞬間だそう。
「自分が描いたマンガを読んだ人が、“紹介されてたお店に行ってみたよ”とか“あの人、めっちゃいいキャラしてるね”って言ってくれるときが嬉しいんです。描いた人やお店の魅力がちゃんと伝わってるんだなって思えるから」

ただつくるだけじゃなく、描いたものがきっかけで人と人がつながる。その手ごたえこそが、ペントを続ける大きな原動力になっているようです。

日高町八代地区に惹かれて

▲八代地区の坂道の風景

但馬内から豊岡市へ移住した岡村さん。きっかけの話になると、岡村さんの表情がふっと和らぎました。
「商工会青年部の活動で八代に行ったとき、坂道の景色がすごくよかったんですよ。神戸とか長崎の坂道っぽくて」

八代は、市街地から少し離れた山あいの集落。坂道の両脇には古い家がずらっと並び、振り返れば青空と山並み。街灯のモニュメントにもその意匠がデザインされた「八代太鼓」の音が響き渡る夏祭りの日は、集落全体が熱気に包まれます。

ちなみに、教育環境もちょっと面白い。八代小学校は“小規模特認校”として市内どこからでも通える仕組みで、地域と一緒になった教育を実践しています。

「もともとアパート暮らしだったんですけど、子どもが走り回るたびに近隣の方に迷惑がかかってないかと気になっていました。でも暴れたい盛りの子どもに静かにしてっていうのもかわいそうで、一軒家に住んでみたいと思っていました」

八代での暮らし

▲雨が降らなかった今年の夏、田んぼの心配をする岡村さん

「友人に空き家を紹介してもらって。古民家への憧れもあったので、見た瞬間に“ここだ”って。もちろん家族の意思最優先ですが、妻もいいじゃんって言ってくれて決めました。移り住んでよかったですよ。ほんとに」
そう言いながら岡村さんが笑います。

集落の真ん中に川が流れ、山や田んぼが家々を囲む八代の暮らしは、とにかく自然と人との距離が近い。

岡村さんのもうひとつの顔が“自給自足モード”。
「30代半ばくらいから思ってたんですよ。災害とか有事のときに生き延びられる知識や技術を持っておきたいなって」

今では狩猟や農作業にもチャレンジ中。自然とテクノロジーを行き来するユニークなライフスタイルです。
「どっちも知った上でバランス取るのが大事だと思います。どっちかに偏ると、見えなくなるものもありますからね」

自然とテクノロジーの行き来のなかに、岡村さんは田舎暮らしの魅力を見出しています。

さらに“家づくり”も楽しみのひとつ。移住した古民家は、まだまだ手を加えられる余白がいっぱい。
「子どもの成長に合わせて少しずつリノベしていきたいんです。家族の時間と一緒に家も育っていく感じがいいんですよね」
暮らしを楽しむ余裕と、ここで腰を据えて生きていく覚悟がにじみます。

「移住を考えてる人にアドバイス? うーん、シンプルですよ」
岡村さんは少し考えてからこう言いました。
「場所より人ですね。人が合えば多少不便でも楽しい。でも逆はきつい。だから短期間でも住んでみたり、地域の人と関わってみるのがいいと思います」

「ペント」を当たり前に

▲おかむさんとゆかむさん

岡村さんが見ているのは、紙とアプリの“二本柱”が、まちの当たり前になる風景。フリーペーパーはふと手に取れて、アプリは思い立った時に開ける。そこで知ったお店や人に「ちょっと行ってみようかな」と足が向く――そんな循環を、静かに根づかせたいのだという。将来は「姫路版」「西宮版」みたいに、各地で誰かが自分たちの手でつくる“地域版ペント”がぽつぽつ生まれていくといいな、とも。

「まずは載った人の商売が動くのが一番うれしい」と岡村さん。アナログとデジタルを行き来しながら、地域の良さをふわっと可視化していく。その姿は、インフラというより“あると心強い近所の掲示板”。ペントがそう呼べる日常になったら、きっと街の景色は今よりもう少しやさしく見えると感じました。

「ペント」が描いているのは、人を通して見える豊岡の魅力。そして、その背景には八代での暮らしがあります。そう思うと、インタビュアーとしても、読者としても、この土地で生まれる物語がますます楽しみになってきました。

この記事を書いた人

飯田 勇太郎

実家の民宿のあとつぎ。
高校まで豊岡市で過ごし、大学進学とともに神戸へ。大学、就職を経験し、地元である神鍋にUターン。
その後、旅行会社に就職し、30歳を機に家の仕事をつぐ。
趣味は音楽鑑賞、ライブ鑑賞。

http://www.4n8.jp

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