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夏の一コマ

(2022年9月12日の我が家の前の田んぼの様子)

みなさん、こんにちは。
但東在住、市民ライターの西垣由佳子です。
たわわに実った黄金色の稲穂がいよいよ刈られるのを待つ季節となりました。

今日はこの夏の思い出の一コマ、「地蔵盆」についてのお話です。
地蔵盆とは地蔵菩薩の縁日である8月23日・24日に子どもたちの健やかな成長を願う伝統行事で、京都を中心とした近畿地方で盛んに行われています。関西の方なら、夏の夕方、お地蔵さんの前に行けばお菓子がもらえる・・・というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。

(8月23日は集落のあちらこちらでお地蔵さんの周りがにぎやかになる)

一口に地蔵盆といっても集落ごとでやり方はいろいろ。
私の住む集落では夜の8時くらいから始まります。夕飯を済ませた後、それぞれの家がお供え物をもってお地蔵さんにお参りします。大人や子どもを合わせて十数人くらいでしょうか。まずは年配の方が先達となって、集まった人たちで般若心経や舎利礼文などのお経を詠みます。もちろんお経を覚えていなくても大丈夫!ラミネートした経典が配られ、誰でもが簡単に詠めるようにしてあります。

(子どもたちはこうした行事の中で自然と日本文化に触れる)

お経の後はいよいよお楽しみ。お地蔵さんにお供えしたものを下げてみんなでいただきます。
コロナ禍のため今年はお参りだけとなりましたが、以前はお菓子や果物、ジュースやビールを囲んで、ご近所の人たちの楽しい交流の場になっていました。大人たちが話に花を咲かせている間、お菓子を食べ終わった子どもたちは花火をしたり、夜の道路で走り回ったり、はしゃぎすぎて周りの大人に怒られたり・・・
コロナ禍で夏祭りをはじめ、いろいろな行事が中止になり、子どもたちの非日常を楽しむ時間が削られていくのが心苦しい部分です。

(毎年、お地蔵さんの掃除は朝の8時ごろから)

そうそう、このお地蔵さんの掃除は23日の朝、女性たちで行われます。周りの草を刈ったり、庭の花をお供えしたりします。誰がする、と当番が決まっているわけではありませんが、自然と誰かしら集まり、できる人でやっています。

(古い時代のお地蔵さんも1か所に集められ、祠の中に大切にまつられている)

お地蔵さんの前掛けをひっくり返したら、白いものがびっしり!
驚いて、思わずのけぞりそうになりました。

(夏はベビーラッシュ。夜行性なので昼間は隙間などに隠れている)

なんと二ホンヤモリの卵です!
ヤモリは「家守」と書きます。クモと同じく、いわゆる害虫も食べてくれるのでありがた~い存在です。夏になると、どこの家の窓の外にもぺったりと張り付いて、寄ってくる蛾や羽虫を食べている様子が見られます。
まさかこんなところに卵を産んでいるとは~。
天敵にも見つからず、お地蔵さんの懐に抱かれて卵から孵化したのでしょう。
ちなみにヤモリは卵を2個ずつ産むそうです。2個の卵が繋がった様子が8(八)の字にも見えるという、末広がりの縁起物!早起きして掃除に行ったご褒美か、良きものを発見した気分でした。

(祠の横にあったゴヨウアケビの蕾。通常、開花期は3月~5月だが天候不順で狂い咲いたのかもしれない)

そんなわけで、今回は但東町の夏の一コマをご紹介しました。
この記事を書くにあたって、他の集落の方にも話を聞いてみましたが、夕方から行うところやお団子をもってお参りするところなど、まさに多様性に富んでいました。共通するのは8月23日に行うことと、どこも自分の集落にあるお地蔵さんを大切に思っておられること。お地蔵さんの数だけ文化があるといっても過言ではないでしょう。

(掃除の後はみんなで休憩。こういう時こそ生活の知恵や昔の話を気軽に聞くことができる)

このような集落の行事が積み重なっていくことで地域の文化が次の世代へと受け継がれていきます。地蔵盆だけでなく五穀豊穣や家内安全など、昔ながらの生活と密接に関わる他の行事も・・・但東町にはそれぞれの集落で大切に繋いでいきたい文化が数多くあります。
高齢化でどこの地区も行事を行うのには苦労しておられるようですが、そういう地域こそ移住された方も積極的に参加して楽しみながら若いパワーを発揮していただけたら、と思います。
かく言う私も、移住してきた当初は戸惑うこともありましたが、集落の皆さんの手によって古くから続けられてきた行事が今となっては大変貴重なことにも気づきました。昔ながらの文化があたりまえにある生活はおもしろく、また人生をより豊かにしてくれていると感じています。

この記事を書いた人

西垣 由佳子

2008年4月に夫の故郷である但東町に移住。但東町での子育てを通して、人の温かさや自然の面白さに目覚める。2021年の春、友人と共に「但東 野あそびくらぶ いつなっと」を立ち上げる。但東の自然とあそぼう、を合言葉に2か月に1回、ときめく自然観察会や自然体験活動をしている。

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