しあわせ運ぶ鳥、特別天然記念物コウノトリが舞うまち~ビオトープ水田編~

市街地にコウノトリが舞い降りるビオトープ水田ができた!!

そらを舞うコウノトリ

ある晴天の日の早朝、‟カタ カタ カタ カター”という音が聞こえた。 
外に出てみると、コウノトリが大きな翼を広げてビオトープ水田に舞い降りてきた。‟カタ カター”は、コウノトリがクラッタリングをしている音だった。

朝一番にコウノトリの歓迎(歓迎かどうかはわからないが……)、良いことありそうな1日の始まりだ!

※クラッタリングとは、求愛や威嚇のためコウノトリがくちばしを激しく打ち鳴らすこと。
※ビオトープ水田とは、稲づくりをしない田んぼに水を張って管理する水田。

コウノトリが舞い降りるビオトープ水田をつくられた有志の一人、宮村さんに話を聞いてみた。

宮村さん

宮村さんは、長年にわたり地域の環境美化に尽力されている人で、環境美化に貢献された活動の一つが、2008年に始まったビオトープ水田づくりだ。

この話のスタートは、田舎では‟あるある”の耕作放棄地の課題からだ。
区画が小さくて不整形な作業効率の悪い田んぼは、時代の変化とともに稲作が行われなくなり、耕作放棄地として地域の環境問題となる。当然だが、耕作放棄地を誰も管理しなかったら草が伸び放題で景観や環境が悪くなる。この地域の耕作放棄地は、特にJRの線路沿いに点在しており、草が伸び放題だと、電車の車窓から見えてよく目立つ。

そこで、宮村さんは、地域の有志に呼びかけ、さらにはJR職員ボランティアの協力を得て、耕作放棄地の草刈り作業や周辺の水路掃除を実施することにした。地域の有志とJRボランティア約30名が共に作業を行い、耕作放棄地を管理し、景観や環境を守ってきた。
この活動は現在も続いており、6月と9月の年2回実施されている。

「なんとか地域の景観や環境を守っていきたい!」こうした思いが、コウノトリが舞い降りるビオトープ水田づくりの始まりである。

ビオトープ水田の様子(田んぼに しっかりと水が溜まっている)

田んぼに水を溜めることで、水辺の生きものが増えた。
毎年2回、近くのこども園(保育園と幼稚園)の園児が魚やザリガニなどを獲りにやってくる!

そして、コウノトリもエサを探しにやってくる!

※コウノトリは完全肉食で、カエルやドジョウやバッタなどをエサとして生きている。

ビオトープ水田ストーリーの始まり

整備前の耕作放棄地

2015年10月、JR豊岡駅から車で5分くらいの住宅街。
周辺の田んぼは耕作放棄地となり、セイタカアワダチソウ等の雑草が生い茂り、花粉が飛散する。

近隣住人から「子どもたちの健康被害が心配だ」との声が上がる。

宮村さんら3人の有志が立ち上がった

草が生い茂っていた。

まず、14名もの地権者に同意を得て、有志3人で草刈りを始めた。3人での広大な土地の草刈りは想像以上に大変な作業だった。

草刈りをしながら、「毎年同じことをするのも大変だな。なにか良い方法がないものか……」と頭を悩ませていた。

豊岡市コウノトリ共生課へ相談

そこで、豊岡市の自然再生を担当するコウノトリ共生課に相談したところ、「水を張ってビオトープ水田にすることで雑草が抑えられて、大変な草刈り作業から解放される」とのこと。

水を張るためには壊れてしまった畦(アゼ)を補修する必要があるが、なんと、市がその費用の一部を支援してくれるというのだ。

畔(アゼ)づくり

畦とは、田んぼの周りを囲う高さ30㎝程度の土の壁のこと。
つまり、水を溜めるために絶対に必要なことは、しっかりとした畦をつくることなのだ。

2015年の秋から2016年の春にかけて畔をつくる。

2016年4月中旬、ようやく水が張れた。長年荒れ地だったところに水を張ったことで、爆発的に生きものが蘇った。感激!

兵庫県立大学大学院の皆さんによる生きもの調査があり、多くの生きものの生息が確認された。

珍しい生きもの発見!!

木の枝に産卵

2016年6月18日、天然記念物モリアオガエルの卵塊が見つかる(写真右上の木の枝にぶら下がっている白の物体)。
モリアオガエルの発見……。さらなる期待に胸が膨らむ!

来たーーー!!

2016年8月1日、野生のコウノトリが初めてビオトープに舞い降りた。一生懸命にエサを探している。
こんなに早くコウノトリが見られるとは思ってもいなかった。大感激!!

ビオトープ水田の改良

2016年9月、ビオトープ水田を2区画にするため、真ん中あたりに畔を設置することに。
豊岡市コウノトリ共生課と民間ボランティアとのコラボ作業!
総勢25名で山から竹を切り出して柵をつくり、土嚢を詰めて完全な畔ができあがった。
わざわざ2区画にした理由は、環境の多様性を作り出すことで、生きものの多様性が向上するというねらいなのだ。

コウノトリが来る。そして、視察が来る。

大学教授など全国から様々な方が見学に来られるようになった。
地域の人々の関心も高くなった。

宮村さんらの活動拡大(ビオトープが増えた) 

宮村さんらの努力により、ビオトープ水田が増え、今では4か所となった。
住宅街の中にもかかわらず、どのビオトープ水田にもコウノトリが降り立ち、エサをついばんでいる。そんな姿を地域の人々は優しく見守っている。

こんな光景を見ることができるのも、宮村さんを中心に、地域の方々が4か所のビオトープの手入れをしっかり行っているからだ。

宮村さんの‟夢”

「これから先、私たちは、先人たちが守り残してきた農業用水路等や周辺の貴重な自然を守っていくこと、生きものが循環できること、この仕組みを築き上げたい。そして、野外のコウノトリが昔のように自然木の巣で産卵し、巣立ちを迎えるということが大きな夢。」

宮村さんの目は確信に満ちていた。

コウノトリと共に暮らす

特急こうのとりとコウノトリ

コウノトリも住めるまち豊岡。

‟コウノトリ悠然と舞い、笑顔あふれる豊岡”
まさしく、コウノトリが舞い降りるビオトープ水田を取り囲み、笑顔の輪が広がっている。

15羽ものコウノトリが!!

2017年10月25日の早朝には、なんと15羽ものコウノトリが!
群れで行動することの少ないコウノトリがこんなにも集まるということは、エサとなる生きものが‟めちゃくちゃ”たくさんいるという証拠。

そして、宮村さんらの‟思い”が、ちゃんとコウノトリにも伝わったのだ(きっと)。

コウノトリの足跡

現在も、毎日のようにコウノトリがビオトープ水田へ来ている。

この記事を書いた人

西垣義嗣

FMたじまパーソナリティ・豊岡市英語遊び指導員。
1988年、アメリカ留学後に京都の建設会社に入社。勤務地は主にオーストラリア
1994年にUターンして英語塾を経営。現在は、豊岡市英語遊び指導員、高校の英語講師、地元FMのパーソナリティ、兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科修了など幅広く地域活動を行っています。

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