海のそばで暮らすということ・後編
海のそばで暮らしていると、時間ができた時ふらっと
浜へ行きたくなります。
そして何気なく出かけた浜で
思いがけず美しい景色や驚きの光景に出会えたりします。
プテラノドンみたいな大きな鳥が
“ギャー!”っと鳴きながら突然飛び立つのを目の当たりにして
びっくりしたり、
綺麗な弧を描いた完璧な虹に出会えたり。
大きなあさりを見つけたり、
ゆっくり沈みゆく美しい夕日を眺めることができたり。
お気に入りは田結の浜
よく訪れるお気に入りの場所は“わかめ”の産地で有名な田結(たい)の浜。
……のわかめ干し場。
ぶら下がっているのは洗濯バサミ。
ここにわかめを手作業で丁寧に吊るし、
春になると天日で干されています。
田結の浜は、豊岡市の母なる川“円山川(まるやまがわ)”と日本海とが
ちょうど混ざりあう所に位置する浜で
ぶつかり合う水流の元育ったわかめは絶品。
その水は神の水とも呼ばれ、ここで採れるわかめは
“神水(かんずい)わかめ”と呼ばれています。
実際に神水という場所もあります。
一度その採藻法を見せて頂いた事があるのですが、
箱めがねを口にくわえて海底をのぞき、
片手で海藻を採る棒を持ち、もう片方の手で船を操縦されていました。
これもまさに神技。
わかめだって主役に!
5月の第3日曜日には“わかめ”が主役のわかめ祭りが開催されます。
毎年ものすごい人で賑わいます。
こちらはイチオシの“わかめ餅”と“わかめにぎり”。
どちらも程よい塩気が効いており最高!
餅は甘いきな粉に包まれていて甘じょっぱい感じの
絶妙なハーモニーがなんとも言えず絶品です。
つきたてのわかめ餅は毎回長蛇の列ができていますが、
並ぶ価値はあります。
港町の小学生の暮らし
子どもたちが通う小学校は海の目の前にあります。
学校の窓から海が見えます。
夏には遠泳大会や砂の造形大会も。
造形大会とは、事前に子ども達が数グループに分かれて
それぞれに造りたい作品を相談して決め、浜に作品を造ります。
水で固めた砂を使い、石や木の枝などの小道具も使って
毎年数々の見事な作品が完成します。
余談ですが…。
浜ではたまに一般の方が作ったのであろうと思われる
見事!?な作品も見かけます。
ちょっと怖いけど…。
なんとなく芸術的。
話は戻って、小学生の暮らし。
海が近いので、男の子は結構な確率でマイ釣り竿を持っています。
放課後に釣りをします。
ここは川ですが、すぐ先はもう海。
左の建物が小学校です。
海や川へは一人では行かず、複数人で行くという決まりがあります。
こんな大物が釣れたことも。
スズキの幼魚“セイゴ”です。ムニエルにしていただきました。
自分で釣った魚の味は格別です。
ときに残酷な現実も…。
美しい浜もひとたび台風がやってくると大量のゴミや流木が漂着します。
外国から流れ着いたであろうゴミも。
そして冬がくると浜は雪で覆われ一面真っ白に。
ここに来るまで、ドラマでした見たことがなかった冬の日本海。
雪が積もるとこんな感じです。こうなるとあまり誰も近づきません。
海岸もしばらく休憩です。
そして春になるとなぜだかまた浜へと足を運びたくなります。
ゴミや流木も色んな方々の努力のおかげで夏の海開きまでには綺麗な浜に。
もちろん地域住民も協力し、毎年7月には様々な形で浜清掃が行われています。
まずは隣保で協力しあう浜清掃。
お年寄りから若い世代まで、皆で協力してきれいにします。
(地区の自治会のことを豊岡では、隣を保つ、隣同士で保ち合うという意味合いから
隣保(りんぽ)と呼んでいます。いい言葉ですね。)
次に小・中学校と地域が連携しての浜清掃。
こちらはもう35年以上も続いているそうですが、
子ども達と地域の皆さんで協力して清掃作業を行います。
そして少年サッカーの合宿時にも初日の朝は必ず浜清掃を行っています。
やっぱり海が好き!
海開きと共にいろいろなイベントも開催され、
また多くの人で浜は賑わいを取り戻します。
こちらは宝さがし大会。
色付きのあさりを見つけると豪華景品が当たるため、
みんな一生懸命に探します。
遠方から参加される方も多数いらっしゃいますが、
やはり地元の子ども達はあさり採りが上手です。
足先を使い砂をまさぐり、貝の様な堅いものに触れると
手でさっとすくい上げます。
海のそばで暮らすということ。
それは時に目を覆いたくなるような現実を目の当たりにすることもありますが、
それでもやっぱり驚きや感動の方が数倍多く、
この地でのびのびと育つことができる子ども達は本当にラッキーだな……と心から思います。
卒業の季節を迎えました。
進学や就職で豊岡市を離れる子ども達もいると思いますが、
みんなが大きくなった時、やっぱりこの場所へ帰ってきたい…
この場所で子育てがしたい…と思えるような、そんな美しい浜
そして港町をいつまでも維持していけたらと思います。
また、“海のそばで暮らすということ”に一人でも多くの方に興味を持って頂けると幸いです。
海のそばで暮らすということ前編