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城崎に暮らす外湯なライフスタイル

突然ですが、

古くは平安時代からおよそ1300年の歴史があると言われている城崎温泉には

7つの外湯があります。

もちろん旅館に内湯はあるのですが、

城崎に住む私からすると城崎温泉の楽しみ方として外湯は欠かせません。

今回はそんな城崎温泉でのお風呂事情についてお話します。

 

浴衣と下駄が似合う町「城崎温泉」をお客様が歩かれる中、

我が家の一行は、パジャマです(笑)。

 

近所から来ていますので、豊岡市民の特権として……それはお許し下さい!

そして週に何度も通うので、

子どもたちはそれぞれお気に入りの外湯があるほど温泉通になっています。

 

ココで、簡単に7つの外湯をご紹介します。

・ サウナやジェットバスがある「さとの湯」
・ 日本庭園の露天風呂がある「鴻(こう)の湯」
・ 檜造りで落ち着ける「柳湯」
・ シンプルな作りですが広い浴場でのんびりできる「地蔵湯」
・ 洞窟風呂や家族風呂のある「一の湯」
・ 檜の桶風呂がある「まんだら湯」
・ ガラス張りの天空大浴場のある「御所の湯」

それぞれに個性があり、

温泉施設としてしっかりと管理されているのでどこも安心して入浴する事が出来ます。

 

正直に告白しますと……私は大人になるまで……

町にはコンビニのような感覚で温泉施設が何箇所もあるのが普通だと思っていました。

 

ところが、

外湯が7つもあるのは城崎温泉だけだと都会に移り住んでから気が付いたのです。

 

城崎の子どもたちは小学校中学年くらいになると一人で外湯に行くようになります。

(特に家が近い子は1年生でも一人で行く子がいたような記憶もあります。)

 

私も子どもの頃は、よく友達と外湯で待ち合わせをしました。

晩ごはんを食べ、好きなテレビ番組が終わった時間に外湯に行く。

ほぼ毎日、友達と夜も遊べるのは何か得した気分でした。

 

ちなみに城崎の住民が外湯に行く時に必ず持参するのが『湯券(ゆけん)』と呼ばれる回数券です。

豊岡市役所城崎振興局城崎温泉課で購入できる温泉の回数券のことです。

この湯券を受付の方”通称・湯番(ゆばん)さん”に渡してお風呂に入りますので

小学生でも現金を持たずにお風呂に行くことが出来ます。

 

小学生が集まってお風呂に入っているわけですから、騒いでしまうこともよくありました。

そんな時は近所の大人たちがちゃんと叱ってくれました。

一般的な入浴のマナーはもちろん、

使った洗面器とイスは戻す。

ロッカーが混雑する時は後ろで待つ。などなど……

 

当たり前のことですが、子どもたちに公共の場でのあり方をしっかりと教えてくれる大人たちがいます。

そうして子どもたちは湯の町に馴染んでいくのです。

 

お風呂で会ってよく話をするけど、実は名前も知らない、そんな人がいたりもします。

 

小学生になるまでは祖父が外湯に連れて行ってくれました。

祖父たちは、観光客で混み合う時間を避け、夕方4時ごろには外湯に行くことが多かったですね。

(城崎の住民は、69歳になると外湯が無料になるのです。)

 

大人になってからはやっぱり”朝風呂”です。

朝から温泉に浸かる事で手軽に味わえる旅行気分。

特に夏は朝風呂上がりの風がなんともいえず気持ち良いものです。

仕事の日でも朝7時から営業しているお風呂で仕事前のリラックスタイムを楽しんでいます。

一通り涼んでから帰ります。

 

そういえば先日、サウナに入っていると隣に欧州風な男性が。

(ここ数年、城崎温泉は訪日外国人数が増え、昨年度は年間4万人を超える宿泊者数となる人気スポットとなっています。)

 

お互いにカタコトの英語で話していると、

『俺たちイタリア人は子どもの頃から日本の『ルパン三世』を見て育つんだ。

俺たちの方が日本人よりもルパンに詳しいんだぜ!』

『ヒデ・ナカタはジャポンのフットボーラーだったよな?』 

小学生の子どもも会話に加わり、ルパンやサッカーの会話で盛り上がりました。

息子や私は英語が得意なわけではありませんが、そこは裸の付き合い。

不思議なものですが分かり合えます(笑)。

 

”サウナに入ると隣がイタリア人”という光景も、

今となっては子どもたちにとって日常の一部となっています。

 

私が小さい頃、城崎にはお風呂が無い家がたくさんあったと聞いたことがあります。

家にお風呂が無くても外に7つもありますし、家にお風呂を作るよりも経済的だったのでしょう。

でも私は、昔から城崎の住民が外湯を地域のコミュニケーションの場として大切にしていたのだと思います。

 

多くの観光客で賑わう豊岡市・城崎温泉。

観光のお客様、外国の方、そして地域の住民が一緒になって外湯に入ります。

 

私も子どもを連れていくような歳になり、

「使った洗面器は元の場所に!」と言いながらお風呂に浸かっています。

湯券片手に出かけていく子どもたちの様子も昔のままですね。

 

そんな子どもたちも将来気がつくのかもしれません。

 

『サウナに入ったら隣にイタリア人がいるのって城崎だけなの?』

と。

桜の時期にはお風呂上りに花見も出来ます。

 

この記事を書いた人

西垣崇史

兵庫県城崎温泉出身。高校卒業後に大阪で映像を学ぶ。
ITインフラが地方でも普及した事で”都会と地方の距離が無くなった”と感じUターン。
市内企業の勤務を経て2016年に「人が集まる場所を作る」をテーマに個人事務所を設立し独立。
飲食と宿泊機能を持つ書店「BookStore iChi」の経営の傍ら株式会社EVAの代表取締役を務める。プロデュースした短編映画「桜が咲く頃 交わした約束は、」がマドリード国際映画祭で外国語最優秀短編映画賞を受賞。

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