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豊岡七駅めぐり《後編》

こんにちは。鉄道ファンの市民ライター、田上敦士です。

豊岡市内にある七つの駅をめぐってみた!というこの企画、前編では駅員さんのいるような比較的大きな四つの駅をご紹介しました。残る三つは、かなり小さな無人駅です。
「玄武洞」「国府」「コウノトリの郷」。いずれも、私自身乗り降りした記憶があまり無いような駅ですが…

実際に訪れてみると、思わぬ発見があったのでした。まずは、玄武洞駅からご紹介します。

5.玄武洞駅

豊岡~城崎間にある玄武洞駅は、国の天然記念物ともなっている玄武洞の最寄り駅です。城崎駅(現・城崎温泉駅)から豊岡駅まで列車通学していた高校時代の私は何百回もこの駅を通っていますが、実際にここで降りたことがあるかというと記憶がはっきりしません。今でも、この駅を使って豊岡市内中心部の高校に通う学生にとっては大事な駅です。

見ての通り、改札口といってもゲートも何もありません。もちろん自動券売機もありません。「こういう駅から列車に乗る時は、どうしたらいいの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。昔は列車に乗ったら車掌さんがやってきて切符を買うことができたのですが、最近は運転士ひとりで運行するワンマン運転の列車がほとんどになってきました。そんな場合には…
《乗る時》
・1両目の後ろのドアから乗車する。入ったところにある発券機から整理券を取る。
《降りる時》
・降りる駅が有人駅の場合は改札で駅員に整理券と運賃を渡す。
・降りる駅が無人駅の場合は1両目の前のドアから降りる。降りるときに乗務員(運転士)に整理券と運賃を渡す。

一言で言うと「運賃後払いのバスに乗る時と同じ」と思ってくださいね。

玄武洞駅のホームに降りると、はるか向こうに玄武洞が見えます。しかし…

玄武洞は円山川の向こう。「最寄り駅」とはいえ、駅から歩いていくことはできません。

かつては駅前には飲食店や玄武洞に向かう渡し船の乗り場があって、玄武洞に向かう観光客でにぎわっていました。
ところが道路の整備に伴い、玄武洞へのルートは「豊岡か城崎からクルマで」というのが主流になり、今は駅周辺にはバス停と民家が数軒あるのみ。一時は玄武洞駅は「秘境駅」のひとつにまで数えられるようになっていました。

かつて飲食店や渡し船乗り場があったところには民家が立つ

近年渡し船が復活し(以前と違い対岸から迎えに来てくれる形です)、玄武洞駅の「玄武洞への玄関口」という役割も復活しています。

国道を渡ったところにある渡し船乗り場の看板には、数日前の大雨の爪痕が残る

渡し船の申し込みは玄武洞ミュージアムまで

6.国府駅

豊岡~江原間にある無人駅、国府駅。私は今回初めて訪ねました。
「国府」の名前は、駅ができた当時の住所が「国府村」だったことからで、その村の名前は、大昔にこの付近に「但馬国府(役所)」があったことに由来するのだろうと思われますが、実は「但馬国府」跡とされる遺跡は江原駅の近くにあります(現在の「但馬国府国分寺館」付近)。おそらくはこの旧国府村に「但馬国府」が存在した時代があるのでしょうが、そのあたりはまだよく分かっておらず「但馬古代史最大の謎」と呼ぶ人もいるようです。

列車の時刻表の横にある階段を上がっていくとホームです。駅に着いた時、どこから入ったらいいのかわかりませんでした。

反対側のホームへは、地下道を通って(というより、トンネルをくぐって)いく形です。私もいろんな駅で乗り降りしましたが、反対のホームに行くのにこんな小さなトンネルをくぐっていく駅はあまり見たことがありません。「車両進入禁止」と書かれているものの、手前に階段もあるし、普通に考えてクルマが通れる大きさではありません。ひょっとしたら「バイクで通り抜けしようとしても、段差があるから無理よ!」という親切心からの進入禁止表示なのかもしれません。

駅前にあるのは、駐輪場と警察の駐在所、そして雑貨屋さんが1軒だけ。ところがこの雑貨屋さん…

近づいてみるとこのお店、「雑貨屋兼簡易郵便局」でした。聞けば半世紀以上もこの形で営業しているとか。郵便はもちろん、貯金や為替などの業務も行っています。お店の構えはどう見ても雑貨屋さんですが、今では雑貨屋さんとしてのお得意さんは駄菓子を買いに来る子どもたちで、お仕事のメインは郵便局の方なんだそうです。

私が物心ついた頃から「鈍行しか止まらない小さな駅」だった国府駅。実際に訪ね、駅名の由来を調べてみて、いろいろな歴史を感じることができました。

国府駅のホームの周りには田んぼが広がる

7.京都丹後鉄道・コウノトリの郷駅

豊岡から天橋立・宮津に向かう京都丹後鉄道の最初の駅。豊岡市内にある唯一の「JRの通っていない駅」ですが、かつては国鉄宮津線の但馬三江駅でした。近くに県立コウノトリの郷公園があることから2015年に改称されましたが、駅からコウノトリの郷公園までは2キロあまり、歩くと30分近くかかります。

駅前には住宅が立ち並んでいるだけで、駅前広場のようなものもなく、お店も何もありません。と思ったら…

駅前を掃除していた男性がこんな看板を出してきました。「カフェ営業中」?

2020年11月にオープンした「駅舎カフェ ぽっぽや」、営むのはさっきまでお掃除していた男性。市内に住む水田政宏さんです。

水田政宏さん

この日は水田さんお一人でしたが、普段は奥さんと一緒に店を切り盛りしています。以前はここでおそば屋さんが営業していたそうですが、閉店にあたって知人の水田さんに店を譲ったのだとか。水田さんは元公務員で、清掃などの駅の業務も行う傍ら、週に何日かカフェを営業しています。

私もコーヒーをいただきました。

6種類あるコーヒーは、京都丹後鉄道の観光列車「丹後くろまつ」などで提供されているものと同じ豆を使っています。薫り高く、美味しいコーヒーでした。

カフェのお客さんは、駅の写真を撮りに来た鉄道ファンだけでなく、豊岡での買い物帰りの京丹後の方も多いそうで、7割ほどが女性だということです。とても静かな雰囲気が好評だとか。
オープンからほぼずっとコロナ禍ということで大々的な宣伝はされていないようですが、時期が来れば「駅カフェ」として人気が出そうです。

《駅舎カフェ ぽっぽや》
営業:毎週水・木・金曜日 9時~15時/第2・第4土・日曜日 11時~14時
※上記以外はお休みですが、臨時休業・臨時営業される場合もあります。

以上、豊岡市内にある7つの駅を駆け足でめぐってみると、それぞれの駅に、地元の人々の生活に根ざした風景があり、新たな発見をできたように思います。
皆さんもお時間がありましたら、一度「七駅めぐり」にチャレンジしてみませんか?

この記事を書いた人

田上 敦士

城崎生まれ。大学進学で上京し、大阪のテレビ局に就職して30年余り。早期退職して2020年に但馬に帰ってきました。
合同会社TAGネット 代表(といっても、社員は私だけです)

http://www.tag-net.work

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