豊岡市の熊対策と緊急銃猟について、市役所でお話を聞いてみた
▲自然豊かな豊岡
大阪から豊岡市に移住して3年。大阪と豊岡の違いで感じることのひとつに「地域の治安情報の内容が違う」というのがあります。
大阪では不審者や窃盗・痴漢など人間による事件が多かったけれど、豊岡に移ってからは鹿や猿、熊といった野生動物が出没したという情報がよく入ってくるようになりました。
豊岡で人間による犯罪がまったく無いわけではありませんが、野生動物の出没情報の多さに「さすがは自然豊かな土地だな」と感じています。
今、熊による人的被害のニュースが全国的に取り上げられています。熊がよく出没する豊岡は安全なのか。豊岡市はどんな熊対策を行っているのか。人間の生活圏で熊を撃つ「緊急銃猟」は行えるのか。熊対策のために市民は何をすればいいのか。
豊岡の熊事情について、豊岡市役所 農林水産課 林務水産係 主任の島田さんにお話を伺ってきました。
豊岡の熊の性格と危険性は?
「今、帰省される方や観光客からの熊に関する問い合わせが多いんです」
島田さんによると、そういった問い合わせには「今のところ必要以上に心配しなくてよい」と答えているそうです。
秋田などは山が深いため人を見たことがない熊や人との付き合い方を知らない熊が多いが、豊岡の熊は人との付き合い方を学習している個体が多いとのこと。
人の気配があれば逃げていくことが多く、急な鉢合わせなどがない限りは基本的に襲ってこないそう。
実際に島田さんは鹿の研究のために山中を1年間で約250kmも歩き、その中で熊と遭遇したのは3回ほど。しかも熊鈴無し。
兵庫県内には現在推定700頭の熊がいますが、豊岡市内の熊は少し減っている印象とのこと。
そして、熊と2メートルの距離でばったり出会ったときも熊の方がびっくりして逃げて行ったそうです。
ただ、熊には個体差があります。2025年5月には、豊岡市の但東町の山中で男性が農作業中に熊と遭遇して怪我を負う事案がありました。この熊は、急な鉢合わせでびっくりして男性を襲ってしまったようです。
熊の人身事故が発生しているのは主に農作業小屋までの道など「山際の道端」。山の近くを歩く際は熊鈴などの対策を心がけたいところです。
緊急銃猟について聞いてみた
ニュースを賑わせている「緊急銃猟(きんきゅうじゅうりょう)」。
緊急銃猟とは、住宅街などの人の日常生活圏内で人に危険が及ぶ状況のときに、銃を使って熊などを緊急に駆除する特別措置のことをいいます。
これについては、法律の改正によって2025年9月1日から実施できるようになっていて、豊岡市でも実際に熊が出没したときに備えて準備をしているとのことです。
こちらは2025年11月21日に実施された、緊急銃猟訓練。市街地での熊の立てこもりを想定しています。
「緊急」の名称が示すように、熊に対して場当たり的に発砲するものではなく、市民に被害が出ないよう安全に熊を追い払うことができるか、箱わなで捕獲できないかなどを検討した上で、最終手段として銃を使用するというもの。
建物内にドローンを飛ばして熊の位置を確認するなど、状況確認・人員配置・射線の確保といった手順を一つずつ丁寧に確認しながら、作業が進められました。
この緊急銃猟の訓練は兵庫県内で初の試み。コウノトリとの共生で自然と向き合ってきた豊岡市ならではのスピード感だなと感じます。
なお、もし小学校に熊が立てこもったとして、通報からどれくらいの時間で担当者が来れるのかと伺うと「30分以内には担当職員が、1時間以内には鳥獣害対策員が現場に到着できる見込み」との回答でした。
有害鳥獣捕獲班が約100名(その内、銃を持っている人は約40人)体制で構成されているのも安心感があります。
ちなみに、捕獲班の人数は足りてはいるけれど若手が少なく、平均年齢が65~70歳のため若い人に是非ご協力頂きたいとのこと。
「人と野生動物が共生する豊岡の未来」の力になりたいという若い方は、ぜひ豊岡市役所 農林水産課にお問い合わせください。
熊を見掛けたらすぐに連絡を
熊を見掛けたら「すぐに市役所か警察に連絡する」ことが安全性向上に繋がります。
連絡先はこちらです。
■豊岡市コウノトリ共生部 農林水産課 林務・水産係
電話:0796-23-1127
通報遅れは人身事故のリスクが高まるため、通報はできるだけ早く。また「どのような大きさの熊が、どの場所に、いつ、どの方向に去ったか」などの熊の出没データが集まることで捕獲も含めた対応の効果も向上します。私自身も熊を見掛けることがあったら「人里に来ても大丈夫」と熊が学習しないよう、積極的に通報したいと思います。
なお、開庁時間外でも豊岡市役所の代表電話にかければ宿直さんが対応して担当者につないでくれるため、24時間連絡が可能。「熊が家のガレージに立て籠もっている」などの緊急事態なら可能な限り急いで駆けつけてくれるそうです。
■豊岡市役所(代表)
電話:0796-23-1111
家の近くで熊を見掛けたら不安でパニックになるので、夜中でも担当者に相談できるのはとても心強いです。
熊との共生に向けて
熊は食べた植物の種をフンとして出して植物の繁殖を助けるなど、山の生態系を支える役目も果たしています。
しかし、人口減少が続いて山に入る人が少なくなり野生動物の行動範囲が広がっている状況で、但東町において熊による負傷事故が発生しました。
市民を過剰に怖がらせている状況は健全ではないため、悪質個体の捕獲や不要なカキの木の伐採などを行って、駆除と防除の両輪で対策に取り組んでいるとのこと。
野生動物は絶妙なバランス感覚の上にいて、一番いいバランスを保てる場所を作るのが行政の役割だと島田さんは話していました。
お話を終えて、今のところ豊岡の熊について過剰に心配する必要は無さそうだと感じました。
ただ、それでもリスクがゼロになるわけではありません。できる範囲での熊対策は日常化させていくつもりです。
豊岡の熊対策に日々取り組んでくださっている皆さまには本当に感謝しています。
熊と人との共生のバランスがこれからも整っていくよう、私もささやかながら応援していきたいです。
熊対策で個人や集落でできること
▲子どものランドセルに付けている熊鈴
広報とよおか2025年8月号に個人や集落でできる熊対策についての記事がありましたので、ご紹介したいと思います。
【個人や集落でできること】
●出会わないために
・早朝や夕方の薄暗くなる時間には山際での活動を避ける。
・熊鈴やラジオなど音のするものを携帯する。
・山や人けのない農林道に入る前には大きな音や声を出す。
・夜間に山際を通る必要がある時は懐中電灯で周囲をよく確認する。
●寄せ付けないために
・田畑や家のまわりにあるやぶなどの潜み場所をなくす。
・納屋などの扉は閉めておく。
・利用しない栗や柿などの木は伐採する。
・生ごみや収穫しない野菜や果物などの誘因物を外に放置しないようにする。
・目撃や痕跡などの情報を市に通報する。
●熊に出会ってしまったときは
・威嚇しない。
・脅かすような声を出さない。
・熊との距離がある場合は様子を見ながらゆっくりその場を離れる。
・他の熊が周囲にいないか、熊の逃げ道をふさいでいないかを確認し、熊の出方をみる。
・熊は自分から逃げるが、もし近寄ってくるようであれば、立木や電柱などを盾にして身を守る。
・万が一、襲われたら、腹ばいになり首を手で守る。
引用:広報とよおか 2025年8月号「クマのことを知ってください」より
我が子が通っている小学校区では、希望者に熊鈴が配布されました。
日高の小学校区では熊出没の情報が入りしだいバス登校に変更されるなど、地域ぐるみで熊対策に取り組んでいます。
■豊岡市クマ目撃マップ
https://www.city.toyooka.lg.jp/kurashi/gomikankyo/dobutsu/1030883.html




