豊岡ファミリーキャンプに行ってきた日
豊岡ファミリーキャンプで育まれる“生きる力”
都会での暮らしの中では、子どもに自然の中で思いきり遊ばせたいと思いながらもその時間をつくるのが難しい日々でした。
豊岡に帰ることを選んだのは、そんな“自然のそばで育てたい”という気持ちがあったからです。
今回参加した「豊岡ファミリーキャンプ」は、その思いをまっすぐに思い出させてくれるような一日でした。
神鍋高原の朝に包まれて
神鍋高原の朝は少しひんやりとして、深呼吸をすると胸の奥まで澄んでいくようでした。
山の上から差し込む光が会場を照らし、きょう一日のスタートを笑顔にしてくれました。
「豊岡ファミリーキャンプ」は、豊岡地域子ども会連絡協議会が主催し、対象は豊岡地域に暮らす親子。
自然の中で、竹の器づくり、カレーライスづくり、滝の散策、バームクーヘンづくりの4つのチャレンジに親子で挑む。
そんな一日を過ごします。
▲青空の下での開会式
子どものころの思い出が背中を押してくれた
私がこのイベントに参加したいと思ったのは、小学生のころの思い出が心に残っていたからでした。
放課後児童クラブの行事でキャンプに行き、竹を割って流しそうめんをした日のこと。
竹のレーンも、箸も、器も、自分たちで作りました。
あのときの竹の香りと、そうめんの味は今でも鮮明に思い出せます。
いつか自分の子どもにも同じように手を使って自然と触れ合う時間を体験させてあげたい。
そう思うようになりました。
それが豊岡に帰ろうと思った理由のひとつでもあります。
新しい仲間とスタート
朝の受付を終えると、参加者はAチームからGチームまでに分かれて行動開始。
1チームが2~3家族でわけられており、初めて会う家族たちが少しずつ笑顔を交わしながら一つの輪になっていきます。
「旅の宿ときわ野」さんが会場を提供してくださり、子ども会連絡協議会の方々と5名のボーイスカウトの方が進行を支えてくださいます。
火起こしや炊飯、散策の誘導など、どの場面でも子どもたちのそばで見守ってくださり、その安心感が一日を包んでいました。
親子でチャレンジ① 竹の食器づくり
最初のチャレンジは、竹の食器づくり。
子どもたちはおぼつかない手つきでノコギリをひきながら、一生懸命に竹を切っていきます。
ボーイスカウトの方がそばで丁寧に教えてくれて、
「上手!」「もう少しで切れるよ」と優しく声をかけてくれるたびに、子どもたちの手に力がこもっていきました。
竹の中からは青い香りがして、ヤスリで磨くと手のひらにすべすべした感触が残ります。
その食器は、後でカレーを食べるためのお皿になると聞いて子どもたちは更に張り切ります。
▲初めての竹の食器づくり~カットからヤスリで仕上げまで~
自分で切って、自分で仕上げた竹の食器を見つめる子どもたちの顔は、どこか誇らしげでした。
日常ではなかなか見られない「できた!」の瞬間がありました。
▲完成~♪いい香り
親子でチャレンジ② カレーづくり
次はチームごとに分かれて、火起こしと飯盒炊爨(はんごうすいさん)。
薪をくべる子、野菜を準備する子―みんなが少しずつ役割を見つけて動き出します。
お米の炊き加減を確かめるときには、子どもたちがボーイスカウトのおじさんに声をかけていました。
胸の養生テープに書かれた名前を見ながら、
「○○さん、これくらいでどうですか?」と自分から尋ねる姿に、驚きと成長を感じました。
頼るのではなく、確かめながら一緒に作り上げていく。
その姿に、地域のあたたかさがにじんでいました。
▲皆で決めたそれぞれの役割をしっかり頑張れました。
そして、飯盒で炊いたご飯は驚くほど美味しかった。
外で食べる特別と、自分で作った食器でのカレーは格別です。
子どもたちは次々におかわりをして、「おいしい!「もうちょっと!」
沢山作ったカレーとご飯はあっという間に空っぽに。
▲ご飯の炊き加減も最高でした!食べ終わった後はもちろん片付けまでしっかり頑張りました。
親子でチャレンジ③ 八反の滝へ秋の散策
お腹を満たしたあとは、みんなで歩いて八反の滝へ。
八反の滝は、神鍋の森の奥にある高さ約24メートルの滝です。
まっすぐに落ちる水の流れが美しく、「兵庫県の名瀑」にも選ばれているそうです。
滝の前に立つと、水の音が山の静けさの中に響いて、空気が少しひんやりと感じられました。
子どもたちは「すごい!」と目を丸くして、しばらく滝の流れを見つめていました。
そのあとはどんぐりを拾ったり、サワガニを探したり。
夢中になって森の中を歩く子どもたちを見ていると、自然の中では“遊び”が特別なものじゃなく、“そこにあるもの”なんだと改めて感じます。
帰り道、小さな“あけび”を見つけました。
紫に色づいたその姿を見た瞬間、昔、父と山に取りに行った日のことがふとよみがえりました。
もう何十年も見ていなかったあけびに、子どもと一緒に出会えたことがなんだか嬉しく、私も童心に戻った瞬間でした。
▲森の中のハイキングに子どもたちは、どんぐりや栗拾いに夢中。
親子でチャレンジ④ 手づくりバームクーヘン
最後のチャレンジは、バームクーヘンづくり。
そこにいた全員が初めての体験でした。
子どもたちは一生懸命に生地をまぜて、棒に生地をぬってー
クルクルとまわしながら焼いていきます。
「もう焼けたかな?」「まだだな〜」「あ~焦げる~!」と笑い声が絶えません。
▲バームクーヘンは生地づくりからスタート!塗って炭火でじっくり焼いての繰り返し。
クルクル焼いていくうちに、
バームクーヘンというより“ちくわ”みたいになってきて、
「これ…本当にできとるんかな?」と少し不安になりながらも
焼き上がりをナイフでカットすると、ちゃんときれいな層ができていました。
「わあ、できてる!」「おいしい!」という声があちこちから。
焼きたての甘い香りと一緒に、笑顔が広がっていきました。
▲完成したバームクーヘンの断面を見た時がこの日一番の歓声でした。
家族の輪と、地域の輪
この一日が、たったの一人700円!
材料や具材、道具の準備は、運営スタッフの皆様や旅の宿ときわ野の方、そしてボーイスカウトの皆さんが丁寧に整えてくださっていました。
私たちはその舞台の上で、思いきり安心して、思いきり楽しむことができました。
朝から夕方まで、自然の中で親も子も笑いっぱなし。
家族だけでなく、周りの人たちと心がつながっていく時間でした。
たくさんの人がいる中で、誰もが前向きな言葉を口にしている。
うまくいっても、ちょっと失敗しても、みんなで「いいね」「楽しいね」と言い合える空気。
それが、この豊岡ファミリーキャンプの一番の魅力だったと思います。
都会にいた頃は、こうした体験をしようと思えば、遠くまで車を走らせなければなりませんでした。
けれど豊岡では、ほんの少し足をのばすだけで、こんな本格的な自然体験ができる。
それって本当にすごいことだと思います。
もちろん、都会でしか得られない学びもあります。
でも、自然の中で、仲間と協力しながら火をおこし、ご飯を炊き、汗をかき、笑う。
そんな中で育まれる「人間力」や「生きる力」は、ここでしか得られないものだと感じました。
日々の暮らしの中では見落としがちな「つくる」「待つ」「分け合う」時間。
その一つひとつが、豊岡で暮らすことの豊かさを教えてくれるようでした。




