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豊岡の学生たち#2「続・地域探究」

みなさんこんにちは!市民ライターの加藤丈太郎です。高校3年生になりました。
今回は「続・地域探究」ということで、前回ご紹介した出石高校独自の探究授業「地域探究」について、前回の記事ではご紹介できなかった2学期後半~3学期までの様子をお伝えしていきます!

【振り返り】これまでの授業の様子をふりかえる

その前に、これまでの授業内容を軽くおさらいしておきましょう。

<1学期>

・前校長と現校長による授業のオリエンテーション
・各テーマ(出石焼、観光コンテンツ、町家再生、出石そば、観光PR広報、永楽館)について全員で授業、体験学習
・1学期終盤に各テーマの班を決める→2学期より班活動開始

このように、前半は基本的にクラス全員で授業を受けるスタイルが基本でした。
そこから2学期ではテーマごとに6つの班に分かれ、各々違う場所で授業を受けます。

班に分かれて授業!

実際に見学させていただいた町家。

先述の通り、地域探究はグループワーク中心の授業となります。
例として、僕が所属していた「町家再生」というグループでの授業の様子を紹介します。

2学期最初の授業では教室に集合し、地元の建設会社の方から出石の町家の歴史や構造を学びました。
その後、校外に出て実際に町家を見学しました。

建設会社の方によると、この建物は建築当初は何らかの商店兼住宅だったそうです。
その後昭和になって住居として改築され、住む人がいなくなり、空き家になったものだと言っていました。

また、町家の中にも入らせていただき、その一室で授業をさせていただけることに。
「秘密基地」のような部屋に、班員は全員ワクワクが止まりませんでした。笑
高揚する気持ちをモチベーションに、町家を活用するアイディアを考えていきます。
最初は班員全員(6人)で1つの案を出そうとしましたが、3人2チームに分かれて1つずつ案を出すことに。

・どうすれば観光客を増加させることができるか
・どうすればこの町家に人が来てくれるのか
・観光客向けに改装?地元の人(高校生)向けに改装?

様々な視点から案を考えました。

空き家の平面図。

具体的に、次のようなアイディアが上がりました。(2つグループがあるので、ここではグループA、グループBと記載しています)
ちなみに僕はグループBに入っています!

<コンセプト(グループA・B共通)>

出石を訪れる観光客・地元の学生に向けた複合施設。
(コンセプトは両チーム共通ですが、設計面や部屋の用途が若干異なっています。)

<グループAのアイディア>

・一部分を飲食店にして、2人用テーブルを設置する
・少人数で利用できるスペースを確保する
・2階部分を客室にして大人数で利用できるようにする
・一部分を物販スペースにして観光客がお土産を購入できるようにする

<グループBのアイディア>

・柱を利用してテーブルを設置する
・螺旋階段を設置する
・室内を自由に移動できるように壁を取り除く

・・・などなど、主に観光客・地元の高校生に向けた複合施設のような構想になりました。

歴史ある出石にひっそりと佇む空き家。
正直、今まで出石の空き家についてここまで深く考えたことは僕も他の班員もありませんでした。考える機会が今までに無かったこともありますが、地元への興味が薄れてしまっていたのも原因の一つでしょう。

しかし、こうして授業の一環で改めて考えてみると、空き家があること自体はマイナスに捉えてしまいがちですが、活用できるというのも事実。
活用しない手はないと思い、班員で「どうすれば観光客に利用してもらえるのか」、「いやいや地元の高校生が気軽に利用できるようにしよう」など、毎時間白熱した議論を行いました。
穴が開くほど設計図に目を通し、議論を重ね、さらに良い意見を出す。
地域探究は古き良き出石のことを知るだけでなく、現代社会に求められる「考える力」も鍛え上げることができるのです。

空き家の室内。若干改装されています

2学期の最後には、町家の持ち主の方を学校にお招きし、活用案をプレゼンテーション形式で発表しました。
プレゼンテーションで使う資料は班員で協力しながら作り上げ、持ち主の方に少しでも分かりやすいよう画像やアニメーションを取り入れ表現方法に工夫を取り入れました。

「どちらのチームもとても良い。この空き家を購入してどう活用していいか悩んでいたが、宿泊施設にしたり飲食店にしたりするのも手だと改めて思った。壁を取り除いたりするのはとても斬新で面白い」と、持ち主の方に褒めていただきました。

今回考えた案は、建物の構造上の問題や金銭面の問題など難しいものは全て無視して考えているので「完全再現することは難しいが、今後の空き家の活用に関しての参考にしたい」とも仰っていました。

ざっとですが、このような感じで授業は進んでいきました。
僕自身としては、普段目にするけどあまり気にしたことがない出石の町家の構造や歴史を知ることができてとても面白かったです。
また、チームの皆で意見を出し合い、まとめて発表する大変さや、やりがいも感じることが多々ありました。

かなり汚れている部分もあり、当時の状態のままの箇所もいくつかあります

学んだ内容を伝える

3学期では、授業の総まとめとして6班全体で活動報告を行いました。
それぞれのテーマの活動内容がとても分かりやすく紹介されており、授業の様子や学んだことがよくわかるプレゼンテーションでした。
来られていた講師の先生方にもお褒めの言葉をいただきました。
1年間を通して学んだ出石の事。それらは今後の街の発展だけでなく、これからの僕たちの人生にも活かすことができるのではないかと思います。

なぜ、この授業をするのか?〜僕の考える地域探究の『意義』

僕は1年間地域探究の授業を受けて思ったことがあります。
「なぜ、この授業を受けるのか?」
ふとした疑問が頭に浮かび上がりました。

振り返ってみれば、この授業はただ座学をするだけでなく、実際にその場に赴いて授業を行い地域への理解を深めていくというものでした。では、なぜ今そのような授業をするのでしょうか。
僕は2つ理由があると考えています。

1つ目。

今豊岡に住んでいる学生は、大学等に進学すれば大半の人は地元を離れてしまいます。
そして、大半の人は豊岡外で仕事に就くと思います。
そんな時に、豊岡を出た若者たちがどれだけ「豊岡に戻りたい」と思えるか。
どれだけ、自分の生まれ故郷に誇りが持てるか。
地域探究は、そうした「郷土愛」の精神を育むための授業だと思います。

あくまでも僕の主観ですが、今の高校生は地元に対して「何もないじゃないか」と思ってしまう人が多い傾向にあると思います。
ですが、実際はそうとは限りません。目立っていないだけで、豊岡にも、出石にも、魅力はいっぱいあります。そんな魅力を再発見するのも地域探究の授業が担う大きな役目だと言えるでしょう。

2つ目。

それは「考える力」をつけるということ。
今、簡単な作業であればほとんどAI(人工知能)が片付けてくれる時代へと突入しようとしています。
いや、もう突入したのかもしれません。
そんな中で、人間に求められるのは「考える力」だと思います。
また、現代は予測困難な社会とも言われています。そんな荒波を越えていく力をつけるのも地域探究の役割ではないか、と思います。

・・・なんて話していると、とても壮大なテーマになってしまいました。
「郷土愛」と「考える力」。
この2つが、地域探究の授業のキーワードになってくると思います。

地域探究Ⅱ、始まる

昨年度は2年生だけが行っていた地域探究ですが、今年度からは3年生も「地域探究Ⅱ」として授業を行うことになりました。
「地域探究Ⅱ」は昨年度の「地域探究Ⅰ」の内容をより発展させた内容としており、昨年度と違うテーマを設定し校外に出て授業をすることに加え、論文やレポート作成、地域探究Ⅰを受ける2年生と一緒に授業をするなど、取組内容も若干変わっています。

出石の未来を担うため、そしてこれからの社会を生きるための授業といっても過言ではない「地域探究」。
生徒一人ひとりが、時に真剣に、時に楽しみながら、これからの未来を切り拓くための学習を重ねています。

この記事を書いた人

加藤 丈太郎

現役高校生ライター。
「”高校生の視点”から豊岡の良さを発信する」をモットーに、記事を執筆。
持ち前のコミュニケーション力とパソコンの知識が武器。

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