小中高生が企画 手作りの「夏祭り」
8月16日、日曜日。豊岡市の「あおぞら市場」に、子どもたちの笑い声が響いていました。
※「あおぞら市場」は豊岡市の中心部にある昔ながらの露店の市場で、ほぼ毎日朝市が開かれています。また、朝市だけでなくフリーマーケット等のイベントも開催されています。他のライターさんの過去の記事でも、朝市やイベントの様子などが紹介されています。
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この日あおぞら市場で開かれていたのは、縁日です。「あわフェス」と銘打ったこの縁日、地元の小中高生らが自ら企画・運営して行われました。
8月初めに行われる、豊岡市の一大イベントである夏祭り「柳まつり」をはじめ、地元のお祭りなど夏のイベントが新型コロナ感染症の影響で軒並み中止となる中、「だったら自分たちで地域の子どもたちが楽しめる場を作ろう」と、豊岡総合高校2年の北村光くんらが仲間を募って実現させました。「あわフェス」とは「Our Festival」、つまり「自分たちのお祭り」という意味です。
呼びかけに応えて実行委員になったのは、同じ塾に通う中高生や小学生、合わせて27人。ただ、企画が持ち上がったのは7月上旬。準備期間は1か月余りしかありません。「夏休みに入るとみんな部活や勉強で忙しくてなかなか集まれず、準備する人数が揃わなくて…それが一番大変でした」と話す北村くん。手分けして地元のお店を回り、くじの景品を提供してもらったり、お手伝いをお願いしたりしたそうです。
迎えた当日。「あわフェス」が始まる午後4時の少し前にあおぞら市場を訪ねてみると、実行委員の中高生たちが揃いのTシャツを着て走り回っています。一方で早くもやってくるお客さんもちらほら…北村くんら中心メンバーは、もう汗びっしょりです。そして縁日がスタート。気が付くと受付の前には何十人もの行列ができていました。感染症対策のために入り口を1か所に限定したこともあり、なかなか行列は短くなりませんが、それも手作りイベントならでは。文句を言う人は一人もいません。
準備に奔走した実行委員たちもそれぞれの持ち場で奮闘しています。北村くんの担当は、大きな水鉄砲を使った射的でした。大喜びで水鉄砲を打ちまくる子どもたち。その他にもヨーヨー釣りや輪投げなど縁日の定番のブースが並び、子どもたちの笑い声が絶えることはありません。かき氷やフランクフルトなど飲食の提供などは大人が手伝っていましたが、運営はほぼすべて北村くんら中高生が仕切っていました。
「どれだけ人が来てくれるのか分からないし、ホントにできるのか不安で、ゆうべは眠れませんでした」と話していた北村くんでしたが、いざふたを開けてみると大盛況。「小さい子どもたちが楽しんでいる姿を見るとこっちも楽しくなるし、嬉しかったです」と笑顔を見せていました。
新型コロナウイルスの影響で、今年は豊岡市内の小中学校の夏休みは短く、8月8日(土)から18日(火)まで。参加した親子連れや小中学生にも話を聞きましたが、やはり今年の夏休みはほとんど旅行にも遊びにも行けなかった人が多かったようです。それだけに、夏休みの終わりかけのタイミングでのこのお祭りは、子どもたちにとっては素敵な「夏の思い出」になったようで、みんな弾ける笑顔で「楽しかった」と話していました。
北村くんの将来の夢は「学校の先生になって、子どもたちの夢をかなえてあげること」なのだとか。まさにこの縁日を通じて、子どもたちに「夢と笑顔」をプレゼントできたのではないでしょうか。そして、縁日を楽しんだ子どもたちだけでなく、北村くんたち実行委員にとっても、自分たちで成し遂げたこのイベントはかけがえのない思い出になったことと思います。
前代未聞の、「楽しみ」を奪われた夏休み。ならば自分たちで「楽しみ」を作ってしまおうという発想と、それを実現する行動力を目の当たりにして、もう40年近く前になる自分の高校2年生の夏を思い返しました。夏休み明けの学園祭の準備をしに毎日学校に行っていたあの夏…私もあんな顔をして走り回っていたようにも思います。ただ、毎年行われる学園祭と違って、全くゼロの状態からこれだけのイベントをやり遂げた、今回の実行委員たち。夏の夕陽に照らされた彼らの表情が、眩しく見えました。