生活を支える“ひやく”
“ひやく”って?
こんにちは!
豊岡市の日高町、神鍋高原で民宿を営む市民ライターの飯田勇太郎です!
突然ですが、みなさん “ひやく”って聞いたことありますか?
ひやく?
飛躍?
秘薬?
僕がここで言う“ひやく”は“日役”と書きます。
…と言ったところで、ですよね。
知らない方も多いと思います。
僕たちが普通に行なっている日役は、あたりまえのようにみなさんがされているわけじゃないと最近知りました。
と言いますか、“日役”と言う言葉は辞書にも載っておらず、一般には通じない言葉だと言うことも最近知りました。
言葉の意味が正確かはわかりませんが、ネットなどで調べた文章をもとに自分の地域の意味に落とし込むと、
「一家に一人は参加し、農道等の補修作業や清掃作業など、村に必要な共同作業を行い、環境を守る作業」
と言ったところでしょうか。
僕たちの村は、内容は異なりますが年に二、三回あります。
特別な用事がない限りは必ず参加しますし、日当も出ます。
おそらく細かいニュアンスや条件は村や区によって違いますが、
「みんな出てきて村のあそこ良くしようや」
と言うのが日役です。
ところで、何するの?

僕が住む神鍋高原は冬の間は雪が積もります。
そして春になり雪が溶けると日役が始まります。
みんなが使う農道にくぼみがあると、砂利や砂を運んできて埋めたりするのも日役です。
田植え前になると、村を流れる大きな稲葉川(いなんばがわ)から田んぼに水が流れるよう、川の整備をしたり、村中の水路の掃除や草刈りをするのも日役です。
そうです。日役をすることで僕たちの暮らしは成り立っているんです。
田舎のつながり

一家に一人は参加する日役、僕がサラリーマンをしてる時代は父親が出ていましたが、実家の仕事をするようになり、僕が出るようになりました。
最初はこんな声をかけられました。
「おえ!やっさん(父親の呼ばれ方)どねしたんだえ!世代交代が早えーちゃうか!親父より働けーよ!」
「草刈りしたことあるんかえ!見とけよ!」
「あんたやっさんとこの勇ちゃんかえ!わからなんだわいや!こっち来いや!」
みなさん、新しい世代がこうして日役に参加するのが嬉しい様子で、快く迎え入れてくれます。
僕もそれが嬉しかったですし、同時に責任感も感じました。
参加する人は50代や60代の僕の父親世代が多いですが、上では80歳に近い方が何名かいらっしゃいますし、下は僕たち30代が数人くらいです。
新参者の僕は、顔は見たことあるけど名前を知らない村の人と一緒に作業したりして、交流ができていきます。
遊びではないので怒られることもあるんですが、ベテランの方から作業の仕方を教わったり、昔話を聞いたり。学ぶことは多いです。
一家に一台の軽トラ

僕たちが住む地域では、ほとんど一家に一台、軽トラを持っています。
そんな軽トラが日役で役に立ちます。
村中の人たちが集まる日役では、ほぼみんなが集合場所に軽トラで集まり、作戦会議をし、軽トラで各持ち場に向かいます。
軽トラが何台も連なる光景をいつも面白いなって見ています。
一家に一台の相棒を、みんな大切にしています。
田舎暮らしのいいところ?

よく、都会の暮らしを求める人の理由で「田舎の付き合いが苦手」と言う話を耳にします。
そんな考えもあって当然です。僕も悩むときがあります。
生活をしていても、誰かが見ていると襟を正される思いです。
グータラもなかなかできません。
でも、頑張っていると褒めてくれる人が、家族以外にも近くにいてくれます。
口うるさくあれこれ言う先輩もいます(特定されませんように)。
でも、悩みを話すと「俺もそうだったわ」と、親身になってアドバイスをくれます。
自分たちの暮らす場所をよくする日役のように、同じ場所に住む人の生活も協力して支えてやろうと言う雰囲気が、僕の田舎にはあります。
今日も村の人が軽トラに乗りながら、誰かが困らないか見回っています。
それは田舎暮らしがよくなる秘薬なんだと思います。