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自分と自然をつなぐもの

こんにちは。但東在住市民ライターの西垣由佳子です。
この冬、我が家ではロケットストーブが大活躍しています。ロケットストーブとは「煙突効果」を利用したシンプルな構造の暖房器具。豊岡市竹野町にある但馬自然史研究所のワークショップに参加して作ってきました。軽くて持ち運びもしやすいイナバ式最新モデルです。

廃材の一斗缶を再利用して作っています

使い方はかんたん!下にある焚き口に枝や薪を入れるだけ。二次燃焼するため、煙も少なく、ほんの少しの燃料でとても効率の良い焚き火ができるスグレモノなのです。

里山は何でも揃う、暮らしのホームセンターだった⁉

スギ葉と呼ばれるスギの落ち葉、あいだから顔を出しているのは、ホウキタケの仲間

山林などの面積が、全体の約9割を占めている但東町。
家の周りの山すそを歩けば、茶色くなったスギの落ち葉や枝が足元を埋め尽くしています。スギやヒノキには油分が多く含まれているので、とてもよく燃えます。風呂を薪で沸かしていた頃はこれを風呂の焚き付け(着火剤)として使っていたのだそうです。

今から70年ほど前、スギやヒノキが木材として高く売れていた時代には、村をあげて植林を行っていました。但東町でも山林の約半分はそんな時代に植えられた人工林で、近所のおじいちゃんが「あの山の木は全部わしらが植えたんだ。」と誇らしげに話してくれることもよくありました。
もちろん、その時代はそれでよかったのですが、時が進むにつれ、外国からの輸入材のほうが安くなり、国産の木はどんどん売れなくなってしまいました。1960年代には、それまで使っていた燃料も電気やガス、石油に代わっていったために山に入る人が減って維持管理ができなくなり、今では山が荒れる原因の一つとなっています。

昔の人は、燃料となる薪や食料、肥料や飼料など、なんでも山から調達していたので、山自体が今でいうホームセンターのような場所だったのかもしれません。木を切ったり草を刈ったり、そこに住む人たちが山を手入れし、利用していたからこそ里山が維持できていた、というわけです。
昔話でもありますよね。「おじいさんは、山へしば刈りに…」って。あれは山で青々とした芝生を刈っていたわけではなく「しば刈り(柴刈り)」といって、焚き木にする枝や草を集めることだったのです。

この日は但馬どりを焼いて、トマトソース煮込みにしました

さて、そんな自然のホームセンターで拾ったスギ葉や枯れ枝をロケットストーブの燃料に使っています。もちろん、野外で暖をとるだけではなく、上に網を置いてやかんをのせ、お湯を沸かしたり、肉を焼いたり、鍋を置いて煮込み料理なんかも。ガスも電気も使わないので、災害時にも役に立ちます。なにより、枯れ葉や枯れ枝などを「資源」にできるという点に、ロケットストーブの魅力を感じています。

自然をたのしむ、自然に親しむ

木の実や殻をさがすのは、秋の楽しみのひとつ

山にはいろいろな宝物がある・・・。そんな目で見ていくと、但東町での暮らしがもっともっと楽しくなります。フユイチゴの実をみつけて食べたり、クロモジの枝でお茶を煮出したり。ツルウメモドキの枝先を飾ったり、雪の上の動物の足あとを探したりなんかも。自分と自然をつなぐものって、案外、そういうものかもしれません。

そうそう、ロケットストーブの上に置いていた鍋の外側がススで真っ黒になりました。じつは、洗剤を使わなくても一瞬できれいになる方法があるのです。

それは、このストーブを使った後の灰。これに少しだけ水を加えて、布につけて拭くと…

真っ黒だった鍋からススがするりと落ちていきます。まるで手品のようです。

あっという間にピカピカになりました。残った灰を畑や花壇に撒くと、酸性に傾いた土壌を灰のアルカリ成分が中和してくれて、一石二鳥です。昔の人はこうやって無駄のないくらしをしてきたのでしょう。

そういえば、ご近所の方が薪を持ってきてくれた時に、こんなことをおっしゃっていました。
「クヌギ(おそらくアベマキのこと)は火力が強いから、もち米もよく蒸せる。クワの木(ヤマグワ)は優しく燃えるから、昔は病人のいる家に持って行ったらよろこばれた。」

木によって燃え方や燃える温度も違っていて、昔の人はそういうことをよく知っていたんだなぁ、と、あらためて木と人のつながりを感じました。

星空の下、冬のごうろ岳

燃える火をぼんやりみていると、すっかり満天の星空に包まれました。ロケットストーブもまた、自分と自然をつなぐツールのひとつとなっています。

 

但馬自然史研究所HOME | tajimashizeneshi (tajimashizenshi.com)

 

 

この記事を書いた人

西垣 由佳子

2008年4月に夫の故郷である但東町に移住。但東町での子育てを通して、人の温かさや自然の面白さに目覚める。2021年の春、友人と共に「但東 野あそびくらぶ いつなっと」を立ち上げる。但東の自然とあそぼう、を合言葉に2か月に1回、ときめく自然観察会や自然体験活動をしている。

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