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大開通りに賑わい戻る!「アッチコッチ商店街」

こんにちは。市民ライターの田上敦士です。
城崎で生まれ育った幼少期、私は体が弱く、毎週のように豊岡病院に通う日々でした。当時の豊岡病院は、駅前をまっすぐ東に伸びる商店街「大開通り」を進み、商店街が途切れた先の立野地区というところにありました。母に連れられて病院に行った帰りには、大開通りの商店街で買い物をして、バスで城崎に帰る、というのが私の日常でした。

かつてのメインストリート、大開通り

大開通りは、1925年に起きた北但大震災で市内が壊滅した後に作られた豊岡市のメインストリートで、道沿いには豊岡市役所や稽古堂をはじめ、当時の趣を残す建物が多く残っています。
1970年には商店街にアーケードが設置されました。ちょうど私が物心ついた頃のことです(しょっちゅう豊岡病院に通っていた頃、でもあります)。その頃の大開通り商店街は、キラッキラのメインストリートでした。まだ珍しかった自動ドアのついた洋品店では、出たり入ったりして親に叱られた記憶があります。
中学を卒業して、商店街近くの豊岡高校に通っている頃も、まだ大開通りは賑わっていました。学校の帰りに、よく寄り道をして、買い食いをしたり、書店で立ち読みをしたり、たまには買い物をしたりしていたものです。

高校を卒業して豊岡を離れ、36年の時を経て戻ってみると、賑わいの中心は町のはずれを通るバイパスに移り、大開通りはいわゆる「シャッター商店街」となっていました。日本の地方都市ではありふれたこととはいえ、かつての賑わいを知る者にとってはあまりにも寂しい風景です。

そんな大開通りをメイン会場とした「アッチコッチ商店街」というイベントが11月21日・22日に開かれました。「大開通りに賑わいを取り戻す」というテーマに加え、コロナ禍で「人を集める」イベントの開催が難しい状況下で、人が密集しないイベントの形を模索した試みです。
目玉企画は「市街地に点在する空き店舗に、各地の人気店がこの日だけのPOP UPショップを出す」というもの。他にも、商店街の既存のお店も特別メニューを出すなどの形で協賛、さらに公園でのアートイベントも開催と、盛りだくさんな内容でした。
実際歩いていると、とても楽しかった!そして、たくさんの人が商店街を歩いているのが嬉しかった!そんな「アッチコッチ商店街」を、写真多めでリポートします。

神鍋ネギの「カルソッツ焼き」

市役所そばの稽古堂前の本部ブースでマップをもらって、いざスタート。
…と、すぐそばでネギを焼いている人たちが。

神鍋高原で穫れたネギを、土がついたまま焼く「カルソッツ焼き」。表面の焦げたところを剥いて、中の白いところをいただきます。蒸し焼き状態にすることで、ネギの甘みが凝縮されるんだとか。
ちなみにネギには長いものと短いものがありました。短いネギは、都会に向けて出荷されるそうです。電車やバスに乗って買い物に出かける奥様方には、短いネギの方が評判がいいんだとか。

「ダイヤメゾン」

市役所の向かい、「1925」のロビーでアルミの生活雑貨などを並べていたのは「ダイヤメゾン」。大阪の南堀江で、カフェと雑貨のお店を開いていらっしゃいます。

アルミ製品がたくさん並ぶ中で、お店のイチ推しは「小型の寄せ鍋」。

このお鍋、私(50代半ば)と同世代の方々は昔よく見かけたことがあるかと思いますが、実は「ダイヤメゾン」店主の寺脇さんのお祖父さんが考案されたんだとか。オールド世代には「懐かしい」、若い世代には「かわいい」お鍋です。私も一ついただきました。

「SOAPHEADS」&「TE tea and eating」

市役所の斜め向かい、かつては道具屋さんだったコンクリート打ちっぱなしのスペースには、石鹸とお茶が並ぶお店が。

石鹸のお店「SOAPHEADS」は自称「流しの石鹸屋さん」。店舗を持たずに、こうしたイベントへの出店などで手作りの石鹸を販売しています。天然素材で作られた石鹸は、見た目もケーキのように綺麗でした。お茶は「TE tea and eating」で、大阪を拠点に各地で中国・台湾茶のお茶会を開いたり、出店販売をされているそうです。

自家製天然酵母パン「PIRATE UTOPIA」

しばらく東に進むと、とても賑わっているお店が…

中をのぞくとパン屋さんで、美味しそうなフォカッチャがたくさん並んでいました。
お客さんが多くて忙しそうだったので、写真も撮らずに「後でまた来ます」と言って店を離れ、しばらくしてもう一度行ってみたら…

「SOLD OUT」の看板を手書きしていらっしゃるところでした。残念!このお店「Pirate Utopia」は西宮に工房を構えるパン屋さん。自家製天然酵母パンが自慢だとか。先に一つ買っておけばよかった…せめて写真だけでも撮っておけば…

「moja」&「沖縄ゆくい商店」

さらに進むと「アフリカ&おきなわ」と書かれた不思議な看板が。

ここは、神戸の元町でアフリカ雑貨を扱う「moja」と、沖縄に半分住みつつ沖縄の民芸品を売る「沖縄ゆくい商店」がコラボしたお店です。ガーナのカラフルな大きなかごと琉球ガラス製品が、豊岡の空き店舗に並んでいる景色は、まさにこのイベントならではのものでした。

「FRANCESCA AMAM LABEL」&「COFFEE BAR HECKE」

コーヒーのいい香りを漂わせていたこちらのお店。神戸・六甲にある「COFFEE BAR HECKE」が、洋服の「FRANCESCA AMAM LABEL」とのコラボで出店されていました。

「FRANCESCA AMAM LABEL」の米倉さんが「HECKE」の常連で、一緒に出店しようと誘ったそうです。さらに「HECKE」つながりで、シンガーソングライターのKent Funayamaさんも参加し、店舗内でミニライブも開かれていました。

「FRANCESCA AMAM LABEL」米倉由賀さん(左)とKent Funayamaさん(右)

「WHATNOT HARDWEAR STORE」

かつての呉服屋さんの跡にはたくさんの工具が並んでいました。「WHATNOT HARDWEAR STORE」は金物の街・三木市からの出店でした。

三木市で作られたものだけでなく、アメリカ製のDIY用品なども扱っているそうです。「廃材を使ったDIYキット」なども展開されているんだとか。

「アート×音楽のマルシェ」

大開通りからカバンストリートに入って南に進んだところにある「ひまわり公園」とその向かいにある「とゞ兵」(かつての老舗料亭、現在はイベントスペース)では、「アート×音楽のマルシェ」が開かれていました。

公園にポップな音楽が流れる中、奥の方には「一刷り千円」の看板が。シルクスクリーンでTシャツなどにプリントしてくれる屋台でした。普段は子どもたちが遊ぶ公園が、アートな雰囲気に包まれていました。

「RBFM+」

カバンストリートを折り返して、今度は通りを北へ。大開通りを過ぎたところに建つ、レトロな「高石医院」の前にも「アッチコッチ商店街」の看板が。

医院の2階で服や雑貨を売っていたのは、「RBFM+」。レトロな建物に、ちょっと神戸の街並みに通じるものを感じたとか。服は全て、手作りなんだそうです。

「豊岡劇場」

映画館「豊岡劇場」も、この日は全作品千円で鑑賞できるスペシャルデーでした。

「ムスビメ」&「Kanon」

豊岡劇場の向かいには、京都のセレクト文具店「ムスビメ」とお花屋さん「Kanon」がコラボしたお店がオープンしていました。

この2つのお店、いつも京都でマーケットを一緒に主催しているお仲間同士だそうです。こちらはイベント初日の1日限りのお店でしたが、女性のお客さんで大賑わいでした。

大開通りに賑わいが戻った!

「アッチコッチ商店街」実行委員長の松宮未来子さんに話を聞きました。「日頃クルマで商店街を通り過ぎている人たちに、あらためてゆっくり商店街を歩いてもらって、面白いお店や建物を発見してもらえれば」という思いでイベントを企画したとのこと。お店のセレクトは、子育て世代など若い人たちに人気のお店を意識して出店をお願いしたそうです。イベント開催前に、空き店舗の所有者の方から「大開通りに昔のような賑わいが戻った風景を見られるのを楽しみにしている」と声をかけられたとか。

この日は午前中は肌寒いお天気でしたが、午後からは青空が広がり、親子連れなど大勢の人たちがマップを片手に市街地を歩いていました。コロナ禍で様々なイベントが中止になる中、豊岡の人たちも「イベントに参加できる」ということを心待ちにされていたのではないかと感じました。まさに「大開通りに賑わいが戻った」のを目の当たりにして、私自身も、往時の大開通りを知る者として、とても嬉しかったです。
その一方で、出店されたお店の方に話を聞くと、豊岡の街並みの印象として「歴史を感じる」「雰囲気がある」という声がたくさん聞かれました。市外から来られた方の目を通してあらためて豊岡市街地の魅力を聞くと、日ごろ当たり前のように見ていた“シャッター商店街”の景色が、にわかに彩り豊かに見えてきたのでした。

この記事を書いた人

田上 敦士

城崎生まれ。大学進学で上京し、大阪のテレビ局に就職して30年余り。早期退職して2020年に但馬に帰ってきました。
合同会社TAGネット 代表(といっても、社員は私だけです)

http://www.tag-net.work

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