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豊岡が音楽の都になった1週間~第8回おんぷの祭典~

こんにちは。市民ライターの田上敦士です。

5月末から6月上旬にかけての1週間、豊岡は「音楽の都」になりました!

2014年に始まった「おんぷの祭典」は今年で第8回を迎えました。
以前(2017年)にもこの「飛んでるローカル豊岡」でご紹介していますが、その後いろいろな進化を遂げていますので、あらためて今年の「おんぷの祭典」の様子をリポートします。

このイベント、テーマは「子どもたちが豊岡で世界と出会う音楽祭」。豊岡という地方都市に居ながらにして、世界で活躍する音楽家が奏でる本物の響きと感動に触れることができる、そんな豊岡という街を子どもたちに誇りに思ってほしいという思いから生まれました。
ですので、音楽イベント(それもクラシック)としては珍しい「未就学児OK」のコンサートや、そもそも「未就学児のためのコンサート」なども行われているんです。

毎年テーマが決められていて、昨年は「ベートーベン」だったのですが、今年は「フランスにゆかりのある名曲」となっていました。

「おんぷの祭典」では、主に5種類のコンサートが開かれます。

・子どもたちのためのコンサート

・学校訪問コンサート

・稽古堂イブニングコンサート

・街角コンサート

・グランドフェスティバル

最終日の「グランドフェスティバル」は豊岡市民会館文化ホール(現在はコロナ禍のため定員を減らしていますが本来は1000人以上観覧可能)で開かれますが、それ以外はいずれも本来コンサートホールではない場所で開かれる少人数のコンサートです。

学校にオーケストラがやってきた!学校訪問コンサート

豊岡市には現在25の小学校と9つの中学校があります。それぞれの学校を演奏家の皆さんが訪ねて演奏するのが「学校訪問コンサート」です。さすがに1週間ですべての学校を回ることはできませんが毎年順番に学校を訪れていて、これまでに市内すべての小中学校を一度訪問しています。今年は8つの小学校で2回目となるコンサートが開かれました。

見出しで「オーケストラがやってきた」(昔の音楽番組のタイトルですね)と書きましたが、実際には「弦楽四重奏」「木管五重奏」といったアンサンブルで演奏されます。演奏家の方に伺うと、カルテットやクインテットといった人数で学校に行って演奏することはとても珍しいそうで、その分子どもたちとの距離が近く、素直なリアクションが感じられるのが嬉しいとおっしゃっていました。

赤ちゃんもOK!子どもたちのためのコンサート

一般のコンサートの多くは「未就学児入場不可」となっています。静かな環境で音楽を楽しむためには仕方のないことですが、一方で子どもたちの発達にとっては幼いうちに素晴らしい演奏に触れることもとても大切な経験です。そこで「おんぷの祭典」では第1回から『未就学児OK・泣いても大声を出しても大丈夫』という「子どもたちのためのコンサート」を無料コンサートとして開催しています。

今年はさらに、未就学児とその家族限定の「子どもたちのためのプレミアムコンサート」も開催されました。5家族限定で、有料とはいえ「1家族1000円」という画期的なコンサートです。

稽古堂で開催された「子どもたちのためのプレミアムコンサート」

仕事帰りにワンコインで!稽古堂イブニングコンサート

「稽古堂」は旧豊岡市庁舎として建てられた歴史的建造物で、現在は市立の交流センターとなっています。ここのロビーで連日開かれるのが「イブニングコンサート」。有料ですが気軽に500円で楽しめるとあって大人気で、あっという間にチケットが完売してしまったため、今年私は見ることができませんでした…残念。

市内のあちこちに音楽家が出没!街角コンサート

旧1市5町が合併して県下一の面積となった豊岡市。そのあちこちで無料のミニコンサートが繰り広げられます。その場所は…

廃校になった旧森本中学校(竹野町・現在はクリーニング工場)

お寺(竹野町・興長寺)

公民館(但東町・合橋地区コミュニティセンター)

城崎の温泉街(城崎町・木屋町小路)

植村直己冒険館(日高町)

コウノトリ但馬空港(豊岡市)

芸術文化観光専門職大学(豊岡市)の図書館

そして私は、出石町にある沢庵禅師ゆかりの寺・宗鏡寺で開かれた街角コンサートに行ってきました。

石庭を背景に奏でられる弦楽四重奏。他では味わえない、非日常空間です。ビゼーの「カルメン」、マスネ―の「タイスの瞑想曲」など、フランスの作曲家の曲を中心に6曲が演奏されました。

演奏されていたのは「シュバシコウ・カルテット」の皆さん。「シュバシコウ」とはコウノトリの一種で、「おんぷの祭典」には2018年からこのメンバーで参加されていて、すっかりおなじみです。

第1バイオリンを務める須山暢大さんは、普段は大阪フィルハーモニー交響楽団のコンサートマスターとして活躍されていますが「豊岡は大好きです。食べ物が美味しいし(笑)。何よりも小さい子どもたちが目をキラキラさせて聞いてくれるのが嬉しくて、とても有意義な取り組みだと思っています」と話してくれました。

最前列で聴いていたこちらの親子連れ、養父市から毎年おんぷの祭典に参加されているそうです。8歳と6歳の女の子、4歳の男の子、みんな「楽しかった」「感動した」と口を揃えて笑顔で話してくれました。8歳のお姉ちゃんはピアノを習っていて、将来は音楽家になりたいんだとか。

アンコールで演奏された「天国と地獄 序曲」では約50人の観客が一斉に手拍子で会場を盛り上げ、コンサートは幕を閉じました。

ご自身も会場でコンサートを楽しんでいた宗鏡寺の小原游堂住職は「初めての開催でしたが、クラシック音楽とお寺と、全然違和感なかったです。生の音は迫力が違いますね。お客さんも喜んでくれて本当によかった。」と満足そうに話していました。

フィナーレを飾る「グランドフェスティバル」

最終日の6月5日(日)には豊岡市民会館で2つのコンサートが開かれました。

午前中の第1部は「キッズコンサート」。ホールでクラシックを初めて聴く子どもたちのためのコンサートです。

市民会館のロビーには、市内の人気飲食店などがイベント出店されていましたが、私が会場に着いた午後1時前にはもう残りわずかに。

以前の記事でご紹介した中華料理の「しゃんらん」の西田さんに聞くと、キッズコンサートを鑑賞し終わった親子連れが一気にやって来られてお弁当を買っていかれたとのこと。やはりキッズコンサートは大人気だったようです。

 

午後2時からのファイナルコンサートは、1週間にわたって各地で演奏された音楽家およそ20名が一堂に会して「おんぷの祭典祝祭管弦楽団」を結成。交響曲や協奏曲など、「おんぷの祭典」の締めくくりにふさわしい名曲を演奏されます。

また、このコンサートでは地元の子どもたちとオーケストラとの共演も見どころの一つ。地方で、いや都会であっても、音楽を学ぶ子どもたちにとって「オーケストラと一緒に演奏する」なんて経験はそうそうできるものではありません。

まず登場したのは近畿大学附属豊岡高校の琴部の皆さん。木管ユニットとのコラボでヴィヴァルディの「春」を演奏されました。

続いては、小中学生ピアニストの皆さんとオーケストラによるモーツアルトの「ピアノ協奏曲・ジュノム」の演奏です。交代でソロを務めた男女5人のジュニアピアニストに加え、コントラバスとフルートの2人もオーケストラに加わって演奏します。ジュニアソリストの皆さん、さすがオーディションを経て選ばれただけあって堂々たる演奏を聴かせてくれました。そんな演奏と「なかなかない経験で緊張したけど楽しかった」と話す、まだ幼さが残る口調のギャップが印象的でした。

その後は、「おんぷの祭典」音楽監督を務めるピアニスト・碓井俊樹さんが登場してのフランクの「ピアノ五重奏曲」。

第1回から参加されているヴァイオリニスト中澤きみ子さんがソリストを務めるモーツァルトの「ヴァイオリン協奏曲・ストラスブール」

そしてフィナーレを飾るのはモーツアルトの「交響曲第31番・パリ」でした。
アンコールではヨハン・シュトラウス1世の「ラデツキー行進曲」が演奏され、会場を埋めた500人を超える観客が手拍子で大いに盛り上がる中、2022年の「おんぷの祭典」は幕を閉じました。

今年で8回目を迎えたこの「おんぷの祭典」ですが、一昨年はコロナ禍のため中止、昨年は海外からの演奏家の来日が中止となりました。今年も感染症対策のため定員を減らしたり、来日予定だった演奏家の方が新型コロナウイルス感染症に感染のため急きょ来日中止となるなど、まだまだその影響を受けながらの開催とはなりましたが、それでもたくさんの市民に素晴らしい音楽を届けてくれました。

実行委員会の岡本慎二委員長は「こういうイベントがなかなか開けない状況の中で、これだけたくさんのお客さんが来てくれたのは本当に嬉しいです。子どもだけでなく大人にも音楽を好きになってほしいという思いでやって来ましたが、帰り際に『よかったわー』と言ってくれる声を聞けるのが何より嬉しいし、やっとここまでこれたなという思いです」と話していました。

この素晴らしいイベントの運営に尽力された実行委員会のスタッフの皆さん、そしてスポンサーとして支えてこられた企業の皆さんに心から感謝するとともに、このイベントがいつまでも続き、いつの日か「このコンサートを聴いて育った子どもが成長して、演奏者として帰ってくる」、そんな日を夢見てやみません。

この記事を書いた人

田上 敦士

城崎生まれ。大学進学で上京し、大阪のテレビ局に就職して30年余り。早期退職して2020年に但馬に帰ってきました。
合同会社TAGネット 代表(といっても、社員は私だけです)

http://www.tag-net.work

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