豊岡では鹿も交通参加者? 車と鹿の事故を減らすための基礎知識
夜の23時過ぎ。
福知山から豊岡へ車を走らせていたときのこと。
山肌の脇に「動物注意」の鹿の絵が書かれた看板が目に入りました。
この時間帯は鹿が出るかもな…と思いながら車を走らせていると、暗闇の先に2つの光が。
…いた、鹿だ! それも道路のど真ん中!
車のライトを浴びた鹿はじっとこっちを見つめています。
3秒ほどすると、鹿はひょいっと山の方へ駆けて行きました。
これまで鹿が山の斜面や道路脇にいるのを見たことはありましたが、道路上にいるケースは今回が始めて。
「動物注意」の鹿看板のある場所は、ホントに鹿が出るんだなと感心しました。
鹿と遭遇したことを家族や親族に話すと、「昔、友人の車が鹿とぶつかって廃車になった」「○○さんの車も鹿とぶつかって大破した」など、けっこう身近でも事故が発生していました。
他の方に話を聞いても「○○のあたりには鹿が出て、このあいだ衝突事故がありましたよ」「○○はよく鹿が出るから夜にドライブしてナイトサファリしに行きました」など、次々に鹿エピソードが。
そして、飛んでるローカル豊岡の編集会議でも聞いてみると、神鍋高原で宿泊施設「志ん屋」を営まれている飯田さんは鹿と2回接触事故を経験されていて、編集長の西垣さんは1回衝突事故に遭いヘッドライトやフロントバンパーを破損されたとのこと。
鹿、予想以上にたくさん出ているようです。
豊岡市内の鹿出没マップについて
実際に豊岡市ではどれくらい鹿との衝突事故が起きているのでしょうか。
豊岡警察署のウェブページに「鹿との交通事故発生マップ(令和5年度)」が公開されていました。
見てみると、びっくり。
(※引用:兵庫県警察 豊岡警察署「警察署管内の事件・事故等発生(検挙)状況」より)
豊岡市全域に事故地点のピンが刺さっています。その数、およそ180件。
1年間の統計なのでほぼ2日に1件の割合です。
これは他人ごとではありません。
大阪で暮らしていたときは鹿に気を付けて運転する機会は少なかったのですが、豊岡に移住した今、「鹿対策の運転技術&知識」が必要だなと感じました。
鹿との事故確率をできるだけ減らすために何をすればいいのか。豊岡警察さんにお話を聞いてきました。
豊岡警察さんに聞く「鹿との交通事故を防ぐ方法」
豊岡警察署 交通課長の窪田様にお話を伺いました。
「この『鹿との交通事故発生マップ』の令和5年は180件くらいなんですが、令和6年は267件、令和7年は232件なんです」
鹿事故は増加し、近年はおよそ3日に2件発生しています。かなりの頻度です。
「事故が起こりやすい月については、1月から4月が月に10件前後なのに比べて10月が37件。令和6年の10月は47件発生しています」
窪田さんによると、鹿の繁殖期にあたる秋は事故の件数が3~5倍になるのだそうです。
豊岡警察署のウェブページに掲載されていた「鹿との衝突事故を防ぐために特に意識したい5つのポイント」について、詳しくお話を伺いました。
【1.速度を抑える】
具体的な速度は時速40kmくらい。ロービームで見える距離が約40mで、ライトに照らされた鹿を目視してからブレーキをした場合、時速40kmなら制動距離的にギリギリ止まることができる。
なお、衝撃度合いについても、速度が出ていればフロントバンパーの損傷やボンネットの交換など車へのダメージも大きくなるため、速度を抑えるのが望ましい。
【2.夜間から早朝は特に注意する】
鹿との衝突事故件数は夜間が圧倒的に多い。
(※鹿は日の出前と日没直後の薄暗い時間帯に活動が活発になる「薄明薄暮性(はくめいはくぼせい)」の動物であるためと思われる)
昼間は見通しが良いのもあり道路上の鹿との衝突事故件数は少ないが、「飛び出してきた鹿との事故」が発生している。
動物注意エリアでは日中でも油断せず、鹿の出没に気を配りたい。
【3.ハイビームを活用する】
ハイビームは約100m先まで見通せるため、鹿の存在に気付くのが早くなる。
時速40kmで走行している場合は停止に必要な距離を十分に確保できる可能性が高まるため、衝突回避につながる。
ただ、自動でロービームになる自動切り換えシステムや対向車への配慮などで常時ハイビームが難しい場合がある。その場合は時速40kmでの走行と組み合わせて、とっさの鹿出没に対応したい。
【4.鹿を見れば徐行し、急な飛び出しに備える】
畑や道路脇にいた鹿が急に車の前に飛び出してくることがある。
道路の近くで鹿を見たらただちに止まれる速度(時速10km以下)での通過が望ましい。
【5.1頭だけと思わない】
鹿は10数頭の群れをなすことがある。繁殖期などは鹿が追いかけっこをすることもあるので、1頭目が車の前を横切ったら「2頭目がやってくるかも」と心構えをして運転する。
【その他の質問】
●クラクションは鳴らさない方がよい?
→鹿はライトをパっと浴びても逃げないことが多い。防衛反応で硬直していると思われる。警音器(クラクション)は強い刺激となるため硬直した状態が続く場合があるほか、車に向かって飛び出すなど予測困難な行動を取る場合があるため控えたい。(※鹿の個体差あり)
●林ではなく2mくらいの法面(コンクリート壁)があっても飛んでくる?
→鹿は田んぼや畑の柵を飛んで越えてくる。法面上から道路へ飛び出してくることもあるため、動物注意エリアでは注意を怠らない。
●安全に避けられない場合は無理にハンドルを切らないほうがよい?
→急ハンドルを切って崖に転落する危険性などを考えると、鹿への衝突は止むを得ない。車に乗車していれば重大な被害に至る可能性は比較的低いため、状況によっては鹿との衝突を受け入れて自身の安全確保を優先することが望ましい。
●鹿にぶつかったときはどこに連絡する?
→事故を起こした場合、110番で警察に届け出を行う。鹿との衝突事故は「物損事故」になりえる。鹿との衝突後、鹿が道路上に残った状態で通報せずに立ち去ると、報告義務違反となる可能性がある。
●鹿と衝突した際の対応手順
→安全な場所に停車し、ハザードランプを点灯したうえで110番通報を行う。高速道路上では非常電話などによる道路管理者への連絡も必要となるが、警察へ通報した場合は事故情報が道路管理者へ共有される。保険会社への連絡は、安全確保と警察への通報を終えた後に行うとよい。
●実際に鹿とぶつかると車はどんな状態になる?
→速度が出た状態での衝突事故の場合、電柱とぶつかったときのように車の前方がグシャっと凹む。フロントバンパーやヘッドライトの破損、ボンネットの変形などが代表的な被害。自走不能となるケースは多くないものの、ラジエーターの破損による冷却水漏れなどが発生した場合は走行を継続できなくなる可能性がある。
●鹿の横断など目撃した場合、警察に報告したほうがよい?
→鹿を目撃しただけであれば、警察への通報義務はない。物の損壊に達しておらず道路上で危険な状況が生じていない限り連絡はしなくてもよい。ただし、クマを目撃した場合は、人身被害の防止や注意喚起のため、警察や自治体へ情報提供いただきたい。
●動物注意の看板、たぬきのマークの看板ならたぬきがたくさん出る?
→タヌキのマークは注意喚起のためのものであり、タヌキだけが出没することを示すものではない。鹿を含むさまざまな野生動物が飛び出す可能性があるため、十分な注意が必要である。
最後に、窪田様から豊岡に移住された方へのメッセージを頂きました。
「夜間の運転はハイビームを活用して頂きたい。ハイビームを有効に使えば鹿を避ける可能性が高まる。速度を抑えるのも大切ですが、それと合わせてのハイビームは心がけていただきたいです」
なお、事故マップについては令和6年度も7年度も発生多発場所はおおむね同じ。
その場所を走行するときは気を付けて走って頂きたいとの事でした。
鹿との共生は運転から
鹿の出没は厄介ですが、大阪で暮らしていた時は「急に飛び出してくる自転車」や「死角からすり抜けてくるバイク」などがありました。
対人事故は被害者対応や精神的・金銭的な負担も大きくなりますが、鹿などの動物との事故は「物損」となり対応面での負担は比較的少ないといえます。
とはいえ、鹿との衝突でも車両の修復に関係する金銭的被害は小さくありません。まずは現在加入している車両保険が動物との接触事故に対応しているかを確認しておくと安心です。
鹿との遭遇は、都市部ではなかなか経験しない豊岡ならではの交通事情。少し運転の意識を変えるだけでリスクは大きく減らせます。豊かな自然と上手に付き合いながら、安心して豊岡暮らしを楽しみたいものです。
私自身も、動物注意の看板がある場所では少し警戒レベルを上げ、夜間は速度を落としてハイビームを使うよう心掛けていきたいと思います。
ちなみに、鹿対策で「鹿避け笛」というグッズがあります。
車の前方に取り付けるもので、車を走らせて速度が出ると「鹿にしか聞こえない周波数の音」が鳴って鹿避けになるという便利グッズです。
私がお世話になっている自動車販売・整備店で鹿についてのお話をすると、これを見せて頂きました。インターネットのレビューでは効果について賛否両論ありますが、お店のお客様はこれを取り付けてからは鹿との衝突事故が起こっていないそうです。
お守り的なグッズですが、少しでも鹿との事故を減らしたい方は取り付けてみてはいかがでしょうか?




