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【豊岡で起業!第9弾】「たくあん漬け」のルーツは出石!?魅力的なお漬物メニューに感動!

こんにちは!
平日は豊岡でカーテン屋、週末は城崎で宿泊業を営む市民ライターの進藤大資です。

豊岡で起業された方をご紹介する「豊岡で起業!」シリーズ、第9弾!

今回訪れた場所は、但馬の小京都と呼ばれる城下町「出石」。まちの中心には時計台「辰鼓楼」(明治4年建造)を筆頭に町家が並び、まるで昔にタイムスリップしたかのような趣深いまちなみが魅力です。

日中は、出石の特産品「出石皿そば」を目当てに多くの観光客で賑わっていました。

▲出石の時計台「辰鼓楼」(出典:豊岡市フォトライブラリー)

その「辰鼓楼」から東へ450メートルほど歩いた先が今回の取材店舗「いずしとわ」です。

▲お漬物キッチン「いずしとわ」。観光客であふれていた中心街とは違い、店舗周辺は昔ながらの建物が並ぶ住宅街で落ち着いた雰囲気です。人酔いし易い私にとっては安心感を感じるような場所でした。

▲お店の外にあるメニュー表。定番のランチプレートを始め、サンドイッチやおむすび、スイーツがあります。テイクアウトも充実しているのが嬉しいですね。

▲店内ディスプレイには、お店のロゴ・辰鼓楼が入った出石焼フリーカップ、絵画や写真など出石の情緒を感じさせてくれるものがずらりと並んでいました。

▲店の外に干された大根。厨房ではオーナーの福富裕貴さんが料理の腕をふるいます。

お漬物キッチン「いずしとわ」
【 福富裕貴さんのプロフィール 】

豊岡市出石町出身。
10歳まで祖父の家がある出石町に住み、その後は親とともに豊岡市日高町へ転居。

大学から京都へ進学。卒業後県外で就職したのちUターンし、「出石まちづくり公社」で約8年半勤務。

2022年6月、お漬物キッチン「いずしとわ」をオープン。

お漬物キッチン「いずしとわ」とは?(「たくあん漬け」の由来)

▲店内写真。お漬物が提供されるお店だとは思えないほどオシャレで綺麗!現代風のカフェで歴史の深いお漬物が食べれるという面白さがあります。

ー本日はどうぞよろしくお願いいたします!お漬物キッチン「いずしとわ」とはどういったお店ですか?

「このお店は、自家製の「たくあん漬け」を気軽に召し上がっていただくカフェです。出石町はみなさんよくご存じの出石皿そばや、出石焼、地酒の「楽々鶴」など歴史ある特産品がありますが、それと同じくらい歴史の深い食べ物が「たくあん漬け」なんです。」

ー出石町と「たくあん漬け」に歴史的なゆかりがあるなんて初めて知りました。

「出石の方でないとまだ認知が低いかもしれません。そういった意味合いでも広めていきたいという気持ちが強くあります。この「たくあん漬け」ですが名前の由来は諸説あり、出石町出身の沢庵和尚が考案したと言われています。」

沢庵和尚は江戸幕府3代将軍徳川家光が深く帰依していた僧侶でした。あるとき家光にふるまった沢庵和尚お手製の漬物を大層気に入り、「たくあん漬け」と名付けたのだとか。
そんな家光と沢庵和尚のエピソードはこちら

このような経緯から、沢庵和尚が生まれた出石の地には「たくあん漬け」の製法が受け継がれてきたのだそうです。

▲家光にふるまったとされる湯漬けと漬物(イメージ)

「たくあん漬け」の由来を聞いたところでランチプレートが到着。「百聞は一見に如かず」ということでさっそく「たくあん漬け」を実食しました。普段食べているスーパーの甘いたくあんとは違い、ぬか独特の香りと酸味を感じます。この酸味がクセになる美味しさで、これを肴に出石の特産品である日本酒「楽々鶴」を一杯いただきたいなと心に思いながら食べました。

▲取材当日にいただいたランチプレート。自家製の「たくあん漬け」から、地酒「楽々鶴」甘酒仕込の漬鶏の唐揚げ、スモークたくあん(燻製)、無添加サラダなど盛りだくさん!私の一押しは、「たくあんドレッシング」。程よい酸味がどの料理に添えても相性抜群で、これだけでご飯が進みます♪

▲たくあんドレッシング。お店のたくあんは『白首大根』という品種が使われています。こちらのドレッシングは、栽培の過程で真っすぐに育たず枝分かれしてしまった大根を使用し、細かく刻んで仕上げたのが商品誕生の背景とのこと。フードロス対策でありつつ、めちゃくちゃ美味しいという一石二鳥の商品です!

「たくあん漬け」との出会い

▲ぬかから取り出したばかりの「たくあん漬け」(テイクアウト可能)。樽漬けをイメージした容器が可愛いですね。

ー「たくあん漬け」との出会いは?

「たくあん寺【正式名称:宗鏡寺(すきょうじ)】と呼ばれる有名なお寺があるんですが、そこで地元の方々と「たくあん漬け」を作る会があり参加させてもらったのが出会いです。樽に大根を漬けていく工程を一通り学び、作る大変さを感じると同時にそれを上回る楽しさがありました。ぜひこの「たくあん漬け」を商品化したいと当時は考えていました。」

その言葉通り、福富さんは前職である出石まちづくり公社管轄の「いずし観光センター」にて、この「たくあん漬け」を商品化し対面販売をされたそうです。売れ行きは好調で、約200本分の「たくあん漬け」が完売という見事な結果!しかしその後、新型コロナによって対面販売が難しくなり撤退することを余儀なくされました。この経験から、「たくあん漬け」を味わっていただくには衛生面を確保した場所づくりが必要だと感じ、起業を意識するきっかけとなったそうです。

▲店内の壁画には、「たくあん漬け」ができるまでの工程が描かれています。9月に大根の種まきを開始し、11月に収穫。そこから大根を干し、漬け込み・発酵という作業の後に完成するのが翌年の3月頃とのこと。この一連の作業を福富さんお一人でされていると聞いて驚きました。

起業の経緯、空き家活用

▲福富さんが10歳まで住んでいた出石町にある祖父の実家(改修前)

ー起業に至るまでの経緯を教えてください。

「前職に入社当初から「出石の「たくあん漬け」を食べれる(購入できる)ところはないの?」という声は度々いただいていました。こんなにも出石とゆかりのある「たくあん漬け」ですが、生産体制や採算との兼ね合いで出石の市場から姿を消した背景があります。進藤さんがさっき召し上がった「スモークたくあん(燻製)」は地元の方が作られたものなのですが、今でもなお「たくあん漬け」を作られている方はいらっしゃるのにそれを提供する場がない…。それならばいっそのこと自分がそういった場所を作れないかと思い、起業しようと決断しました。」

仕事を辞めて起業を決意した福富さん。どこか良い場所はないかと考えていたときに、ふと10歳まで住んでいた祖父の家がずっと空き家になっていることを思い出します。

「よし、この場所で起業しよう!」

 

▲空き家改修中の様子

「祖父の家を改装しようと思ったのですがその資金がありませんでした。ちょうどその頃、人づてに『IPPO TOYOOKA』の存在を知ったんです。ビジネスの専門家からいろんなアドバイスをいただけるということを耳にし、何か良い資金調達方法はないかと相談に行きました。」

2021年春頃から『IPPO TOYOOKA』へ通い始めた福富さん。現在の状況や構想の一部始終を説明した後、相談員の今井さんから空き家を活用する際に使える補助金制度を紹介されました。今井さんのサポートと福富さんの努力によって2021年秋に応募した補助金はその年の冬に採択され、無事改修工事をスタートすることができたそうです!

▲「お漬物キッチンいずしとわ」(改修後)

「次に、クラウドファンディングをオススメしてくれました。その目的として資金を募ることもそうですが、それよりも『出石のたくあん漬け』を皆に広めるための宣伝・販路開拓としてのメリットが大きいことを知ったんです。せっかくオープンしても認知されていなければお客様は来ないですし、クラファンのリターンとして店舗で使えるお食事券を用意することで、お店に足を運んでもらうためのきっかけ作りになることを教えていただきました。」

当時のクラファンページがこちらです。

『出石は蕎麦だけじゃない!たくあん漬けも名物だと知らしめたい!』

福富さんの熱意がこもったクラファンページは瞬く間に反響を呼び、目標金額300,000円に対して支援総額は453,500円(支援者数57人、151%達成)という支援を募ることに成功します。前回取材した加悦佐也加さんもそうでしたが、起業される方にとって大事な要因の一つがほとばしる熱量なのだと感じました。その熱量が皆に共感・応援へと化学反応を起こしていくのではないでしょうか。

▲クラファンのトップページ

起業後の反響、今後の展望

コロナの関係で改修する店舗の建築資材が遅れるなどのトラブルがあったものの、2022年6月30日『お漬物キッチンいずしとわ』をオープンされました!その後の反響を聞いてみました。

ーオープンしてから反響はどうでしたか?

「当初想定していたターゲット層のメインは観光客でした。なぜなら、出石に来られる観光客が「ご当地の食事」を求めて当店にも足を運んでくださるのではないかと思っていたからです。しかし、実際オープンしてみると9割が地元や周辺地域の方だったんです。話を聞いてみると、昔ながらの出石の「たくあん漬け」の味を求めてこられている方がたくさんいらっしゃいました。

なつかしい味がする。」「ここが落ち着く。」ありがたいことにそのような感想をたくさんいただき、人づてに当店を知って来店される方が増えていて、少しずつお店が認知されているのを感じています。ほかにはSNSをきっかけに来店されるお客様の多くがわたしと同世代くらいです。」

客足は順調に伸びているそうで、現状では利用されるお客様の9割以上が女性客とのこと。出石皿そば店が建ち並ぶ出石町にとって、福富さんが営むカフェは地域の貴重な憩いの場になっているようです。「お客様とのコミュニケーションの中で新たな商品開発へのヒントが生まれ、それを反映していくのが何よりも嬉しいことです!」と商品開発の楽しさを福富さんは語っていました。

▲地元客からの要望で商品化された『たくあんおむすび』。連日完売する大人気商品で、私が取材した際もすでに完売していました。次回は食べてみたい!

ー「いずしとわ」を今後どういったお店にしたいですか?

「当店へ来られるお客様が、出石とはどんなまち・場所であるかということを想像して感じてもらえるような空間にしていきたいと思っています。また、出石の「たくあん漬け」を老若男女問わず味わっていただきたいですし、現代人の食生活に合ったメニュー開発をすることでより身近なものと感じてほしいです。

「いずしとわ」は、『出石とは』どんなまちなのかを考え発信できる商品開発をするという決意、『出石(が)永遠』に元気なまちでありますようにという願いを込めて名付けました。「出石の皿そば」のほかにもたくさんの魅力的な資源が出石にはあります。その第一歩としてこの「たくあん漬け」を多くの人に知ってもらい、出石の魅力を再発見してもらえれば、と思います。

また、そのほかに当店の2階スペースを『地域が交流する場』として活用したいと考えていて、その取っ掛かりとしてコワーキングスペースを作りました。というのも都会では充実しているコワーキングスペースですが、出石町には一軒もありませんでした。ネット環境が整った場を提供することで、気軽に地元の方や観光客が利用・交流するきっかけ作りになり、貸し出しOKなのでコミュニティの会議やワークショップのレンタルスペースに、そして出石高校がすぐ近くにあるので学生さんのテスト勉強などにも利用していただきたいですね。」

▲2階のコワーキングスペースエリア。電源・コピー機・Wi-Fiが使用可能。(利用料:2時間500円)

取材を終えて

▲出石川の先にそびえ立つ出石の有子山(標高321m)。山の麓には「出石城跡」、頂上には「有子山城跡」があり、出石城下町の風景を一望できる絶景スポットです。

「お漬物」×「カフェ」という組み合わせの店舗が出石にオープンしたと聞いたときは正直想像ができませんでした。なぜお漬物?そしてカフェ?という疑問を持ちながら興味津々でお店に伺いました。「たくあん漬け」の歴史的背景を知り、商品開発や店舗の内装、地域の声や交流拠点作り、出石の未来を見据えた願いなど並々ならぬ思いがつまったお店なのだと感じました。

「たくあん漬け」の食べ方で、個人的に面白いと思った福富さんの言葉を最後にご紹介します。

「「たくあん漬け」は3月頃に完成しますが食べる時期によって風味が変わります。完成してからも樽に寝かせていると酸味が増していくので、味が変化し旨味が増していくんです。」

一度食べただけでは語れない奥の深い「たくあん漬け」。お漬物キッチン「いずしとわ」も今後さらに熟成し、より味わい深いお店になっていくような気がしています。

【 店舗情報 】
お漬物キッチン「いずしとわ」
営業時間:11:00~17:00(LO:16:30)
定休日:木曜日、他不定休
TEL:0796-20-7437
住所:兵庫県豊岡市出石町材木11
SNS:Instagram

この記事を書いた人

進藤 大資

城崎温泉出身。
大学進学後、一度は都会に移住したものの、2017年に地元へUターン。
豊岡市内で、家業である「カーテン工房」(窓周り専門店)に務める傍ら、2019年度より始まった豊岡市管理のビジネス相談窓口「IPPO TOYOOKA」にて、起業相談を重ねる。
その後2020年1月より、夢であった城崎温泉で一棟貸しの宿泊施設「きのいえ」をオープンすることができました。
演劇・アート・レジャー・グルメ、そして何より魅力的な人達がたくさん集まる豊岡市。
めまぐるしく変化していく情勢を楽しみながら毎日を過ごしています!

http://curtainkobo.com/

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