【豊岡で起業!第2弾】株式会社アンズケア/And’s Care さんに取材に行ってきました!
2019年に都市部から豊岡市にUターンしたえりかです。
早速ですが…
みなさん こちら何のための場所だと思いますか?
燦々と太陽の光が差し込む開放的な窓。
木の温もりを感じさせる設え。
観葉植物やドライフラワーが人をやさしく迎え入れ、一歩足を踏み入れた途端にリラックスしてしまう空間。
私自身、何度かこの施設の前を車で通りかかったことがあるのですが
この日、取材でお伺いするまでは、新しくできたカフェだと思っていました。
そう、カフェじゃないんです。
ここは2020年3月、豊岡市日高町にオープンされたリハビリ特化型デイサービスのand Reha.(アンドリハ)さん。
今回はこちらのリハビリデイサービスを運営されている
株式会社アンズケア/And’s Care の代表取締役、秋山一平さんにお話を伺ってまいりました!
秋山さんプロフィール
株式会社アンズケア/And’s Care代表取締役。
養父市出身。
理学療法士として神戸市、養父市の病院勤務経験を経て2019年11月に同社を設立。
2020年3月、豊岡市日高町にリハビリ特化型デイサービスのand Reha.(アンドリハ)をオープン。
介護のイメージを覆すこだわりの空間
ーー早速ですが、本日はよろしくお願いします。とにかく施設がおしゃれ&明るい&きれいですね。まさかここがリハビリに特化したデイサービスだとは思いませんでした…。
「ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。空間造りはとても大切にしていて…。介護の施設って、暗かったり、閉鎖的であったり、風通しが悪いイメージを持たれることが多く、それを払拭したいなと。そして、設えなどの見た目だけでなく、施設内の雰囲気も重要だと考えています。おかげさまで、仲間のみんなも和気あいあいと働いてくれています。」
介護の常識を超えていく
ーーこちらに伺う前にホームページを拝見しました。「〜介護の常識を変え未来を支えていく〜」というメッセージを強く感じたのですが、秋山さんにとっての介護のイメージを変えるとは具体的にどういったものなのでしょうか?
「逆に、介護と聞いてどんなイメージを持たれますか?」
ーー言いにくいですが、やはりまだまだ4K5Kのイメージが強いように思います…。きつい、汚い、暗い、臭い、給与が低い…。
「そうなんです。やはり介護と聞くとマイナスのイメージを多く持たれがちで、それが現状なんですよね。でも、そのマイナスをプラスに転じられる場所があってもいいんじゃないか、全てを一度にプラスに転じて行くことが難しいのであれば、マイナスを補えるようなプラスの場を作りたい、そんな想いをカタチにしていこうと動き始めました。その始まりのカタチが、ここ、and Reha.(アンドリハ)です。」
日高町エリアのニーズと秋山さんの想い
秋山さんが養父市の八鹿病院にお勤めの頃、隣接する豊岡市日高町からの入院患者のリハビリも担当されていました。しかし、退院後に通える施設が日高町内にないため、わざわざ近隣の市まで足を運んでリハビリを続けている方々をたくさん目にしてきたそう。要するに、日高町にはリハビリ難民の方が多くおられたのです。
秋山さんは、この地域の課題を解消したく「リハビリ施設をオープンするなら日高だ」と決意。豊岡市もこういった現場への打開策を模索しており、市の想いとも合致して日高町で創業されました。
「利用者様に“こんな施設が欲しかった” “リハビリ専門の方に診ていただけて嬉しい”などと喜びの声をいただくと、ここを選んでよかった、と改めて思います。」と秋山さん。
ご自身が医療、介護の現場で実際に肌で感じた「介護の常識」への違和感を切り開いて行動していく力強さと、地域のニーズを把握し、常に未来発想で事業を創り上げていく秋山さんのお話に、一気に引き込まれていきました。
ここからどんどんお話を伺っていきます。
「&」に込められた想い
ーー気になるのが会社名やロゴにも入っているこの“&/and/アンド”。これにはどのような想いが込められているのでしょうか?
「何かと何かをつなげる、つながるような場所を作りたいという想いが込められています。まずは介護と地域をつなげたいと思い『あなたとリハビリをむすぶ場所』というコンセプトのもと、このand Reha.(アンドリハ)をスタートさせました。たくさんのヒト・モノ・コトを繋いでいき、『楽しそうな地域の拠点』が実は『介護を得意としている会社でした』っていうのが個人的に面白いかなと。そしてこの想いが会社名にもなり、理念にもなっています。」
自分がしてみたいことがいろんな「&」でつながっていく
実際に、お絵かき教室や、お花教室、子ども向けのプログラミング教室などを“&”で介護とつないでこられたそう。近隣の農家から新鮮な地元野菜を仕入れ、なかなか遠出ができない利用者に買い物を楽しんでもらう“and808(アンド八百屋)”のアイデアには目から鱗が落ちました。
すでに沢山の“&”を実現している秋山さん。そのアイデアやインスピレーションの源泉は「まずは自分がやってみたいこと」なんだそう。そして、ただ実行するのではなく「おしゃれでカッコいい」ことにもこだわりを持ちながら、どんどん具体化されている様子が伝わってきました。
介護&子ども
「また、子どもたちにもどんどん来て欲しいと思っています。今は新型コロナウイルスの感染リスク軽減のため、なかなか実施できていませんが…。子どもがここではしゃいでいる光景って、なかなかおもしろいんですよ!職員に子どもが生まれた時も、施設に見せに来てもらったんですが、利用者さまが皆さん喜ばれるんです。一番のリハビリだと感じました。こちらが嫉妬してしまうほど、赤ちゃんや子どもにはチカラがありますね!今後も、子どもたちがもっと気軽に立ち寄れる場所にしていきたいです。」
起業に至るきっかけ
秋山さんは、高校生の頃から自分の想いをカタチにしたいと考えていたそう。進路を決める際、人との関わりを大切にしたいご自身の想いと、看護師であるお母様の後押しもあって理学療法士になる道を選択し、西宮にある専門学校に進学します。そこでは“今”につながる運命的な経験が待っていました。
ここから、起業に至るきっかけへと話は進んでいきます。
「専門学校では全国のいろんな施設へ実習体験へ行くんです。で、僕はたまたま岡山県にある施設が実習先だったのですが、これがもう、運命的としか言いようがなく。
その施設は理学療法士が起業した会社が運営し、医療•介護業界になかなかない新しい形態をとっていて、とても感銘を受けました。それまでは漠然と何かしたいと思っていたことが、この岡山での実習でバチッとはまり、これだ!これを絶対したいんだ!と決意に変わりました。」
秋山さんはこの想いを抱き続け、神戸市の病院や養父市の公立八鹿病院で経験を積み、スキル、知識、あらゆる面で自信を持たれたタイミングで企業への決意を固めます。
そして、奥様の理解や、運命の岡山の実習先の社長と直接お話をする機会を経て、起業に向けてぐっと舵を切ることになったのだそう。
大切なパートナー小林さんの存在
ーー奥様の理解、夢へのきっかけを与えてくれた岡山の社長との面談。なんだか秋山さんが動き出すと、素晴らしい出来事や出会いが集まってきていますね。
「そうなんです。本当に人に恵まれているというか…。商工会や銀行の方、この土地を紹介してくださった仲介業者の方もそうですし、新聞社の方にも取材に来ていただけたり。この他にもたくさんの方にお力を借りて、本当に感謝しています。そしてやはり一番は小林ですね。
小林はもともと高校の1学年後輩で知り合いだったんです。彼は但馬内の介護施設、僕は病院で働いていたため、たまに会った時にはいつも仕事の話をしていたんです。で、僕の中では但馬内のドラフト1位だって彼を口説いたんですよね笑。完全にヘッドハンティングでした。働いていた施設から慰留もあったみたいなんですが、彼はそれを押し切って来てくれました。勇気が相当いったと思います。介護の現状を変えたいという同じ想いがあって、事業に加わってきてくれたことを本当に感謝しています。」
取材時に小林さんにもお会いしたのですが、ご自身の言葉で介護業界に対する想い、地域の未来、事業への思い入れを教えてくださり、やはり“志”を持った方の言葉にはチカラがあるなと感動しました。
起業って何をするの?IPPO TOYOOKAとの出逢い
起業に向けて決意を固めていった秋山さん。でも、最初は何から手をつけたらいいのかわからなかったそう。(逆に知っている人の方が少ないですよね?)
ーーIPPO TOYOOKAの存在は既にご存知でしたか?
「いえ。知りませんでした笑。ネットで豊岡 起業、豊岡 創業と情報を調べていたらIPPO TOYOOKAが出てきたので、こんな起業の相談ができるところがあるんだ!と。今すぐにでも駆け込みたい思いでしたが、人気の窓口だったので予約を取り心待ちにしていました。そこで担当の今井さんにあれこれ相談することでより具体的に話が進んでいったんです。」
そして起業へ!IPPO TOYOOKAとの連携
ーーIPPO TOYOOKAとの連携で助かった点や良かったところを教えてください。
「本当に大きな存在で、とても頼りにしている場所です。創業したてって、お金もないですし、経営の専門家に相談するのはなかなか難しいんです。そんな中、今井さんのようにプロフェッショナルな方に無料で相談できることは本当に心強かったです。起業ってどこか心細い部分もあるので…。そんなとき、今井さんがパートナーのように、そしてドンと構えてくださっているというのは心の大きな支えになりました。」
ーー具体的にはどのようなサポートを受けられましたか?
「補助金制度のことや自分で考えた事業計画の更なるブラッシュアップ、報道機関へのプレスリリースの文章作り&添削や流し方まで細かくサポートしてくださいました。人によってはホームページの作成方法を教わったりもしているようです。
そうそう、相談ももちろんですが、起業者や創業者同士のつながりもたくさん作ってくださいました。相談者向けの勉強会もあり、ここでできた人とのつながりに公私ともに助けられ、心強い関係が築けています。」
IPPO TOYOOKAに期待する面を伺うと、人気なので、次回の相談予約まで待ち遠しかったため、
「もう少し予約が取りやすければいいですね(笑)。それほど信頼している場所で、まずは一番に相談したい。」
と秋山さん。
&がつないだ期待値以上の今
様々な準備を整え、さぁいざ!2020年3月and Reha.(アンドリハ)オープン!のはずが、新型コロナウイルスの渦中に。秋山さんはもう割り切ってできることをしていくしかない、最善を尽くそうと腹を括り、淡々と歩みを進められました。すると大変な最中でも利用者数は増え、決意に状況がついてきてくれたそうです。
ーー実際に起業されてみて、当初のイメージと今現在の心境とでは乖離がありますか?それとも思った通りでしょうか?
「すべて期待値以上です。上振れしています。売上げや収益は後から追いついてくるものなので一旦置いておいて、“想い”という面で自分が考えていた以上の素晴らしい経験を得られています。
働くのはもちろん楽しいですし、事務作業があるので帰宅時間はまだまだ遅くなりがちですが、やりたいことをさせてもらえているという気持ちの面ですごく充実しています。
何より、直接利用者様に“こういう所ができて良かった”と言っていただけることが、もう本当に、何にも変えがたいほど嬉しいんです。」
これからのビジョン
逆境と思われる場面も追風に変えておられる秋山さん。未来への展望を伺いました。
「直近で言うと、小林や一緒に働いている仲間達の満足度も高めていきたいなと思っています。今は突っ走っているような状況なので笑。良いスタートを切れたので次は地盤を固め、それを確固たるものにしていくフェーズに入ったかなと思っています。
そして大きな視点での未来へのビジョンがあります。」
同じ想いを抱く仲間が集まる場所に
「質の高いサービスを提供するには質の高いスタッフが欠かせません。そのために働く環境を整えたり、ルールなどの仕組みづくりが最優先だと感じています。そこが整って初めて利用者様に十分なサービスが提供できると。
今後会社の規模が大きくなるにつれて同じ想いを持った人材がさらに必要になってきます。優秀な人材の確保はもちろん、その人たちに充分な対価が与えられたり、自信を持って働いてもらえたりするような環境づくりをしていっているところです。
僕たちと同じように介護業界を変えたいって思っている、けどその気持ちを消化しきれていない、表現しきれていない、そういう人が埋もれてしまわないように、“介護は〇〇だから…”という古くからのマイナスイメージを払拭して、“いやそうじゃないんだよ!”とあたらしい介護のカタチを示せるような場所にしたいと考えています。」
「&」でひろがるあたらしい介護のカタチを創る
「この事業所(アンドリハ)は私たちのスタートの場所です。この場所を中心にいろんなことがつながり、全てが美しく交わる地域拠点にしたいんです。たくさんの「&」でつないでいきたいですね。
会社としては、リハビリ専門職であるPT/ST/ OT(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)が主導になるリハビリ施設を地域ごとに増やしていこうと考えています。」
但馬地域の介護の未来を変える
「介護業界の人手不足はさけられません。特に但馬地域(兵庫県北部)のような若者がどんどん出ていってしまうようなエリアでは、介護従事者が減っていくのに対し、介護を必要とする人は増加するといった高齢化は避けられないですからね。少しでも今から変えておきたいんです。
今まで介護に興味を持てなかった人材や、もしくはもう離れようと思っていた人材が、“おやおや?なんか介護を主軸に面白いことをしている会社があるぞ”と、僕たちのことを見つけて飛び込んできてくれたらと思っています。
そうそう!ちょうどこの場所は福祉科、看護科・看護専攻科がある日高高校の生徒が前をよく通るんですね。僕たちはポンとただここに佇んでるだけですけど、若い世代がここを見て少しでも興味を持ってもらえたらと、未来への選択肢の一つになればいいなと。
優秀な人材が集まって、但馬の未来の新しい介護のカタチを支えられる存在になるようにと考えています。」
豊岡市で起業をススメるポイント
ーーすばらしいビジョンですね!実現している光景が目に見えるようです。もし良ければ、これから起業を考えておられる方に向けて、豊岡市でのおススメ起業ポイントがあれば教えていただけますか?
豊岡市独自の手厚いフォロー
「まず一つは近隣の市に比べて起業家に対して手厚いフォローがあると感じます。もちろん近隣各市、独自の支援策があるのですが、IPPO TOYOOKAさんの存在や、豊岡市独自の支援金や創業支援の特別給付金があり、これは、同じ時期に創業/起業したメンバーも同じように言っているので私個人の主観だけでは無いと思いますよ。」
動きのある豊岡市だからこそのメリット
「次に、今からいろんな面で動いてくる市だということです。豊岡演劇祭や新しくできる大学、城崎温泉という有名な観光地もあります。ヒトもモノもカネも動く。この動きがある中で起業していくっていうのはすごくアドバンテージがあると感じます。逆にガチッと固まってしまっている地域に飛び込んで行くのはなかなか勇気も入りますし、そのルールの中でやらないといけないですよね。
その点、豊岡市は良くも悪くも流動的だと感じます。自由度が高く、やりがいがあるのは魅力的ですね。
また、豊岡市の注目度も上がっていますし、やはり但馬の中心になる市だと思っているので、UターンIターン含め、どんな方でもこの場所で起業をするっていうのはさまざまなメリットがあると感じています。」
土地や賃料が安い場所が多い
「あと、これはもう言わずもがなですが、都市部に比べ土地や賃料が安い場所が圧倒的に多いです笑!」
秋山さんから読者のみなさんにメッセージ
ーー貴重なお時間をいただいて、たくさんの素晴らしいお話をありがとうございました。まだまだ聞きたいことはありますが…最後に読者の皆さんに向けてメッセージをお願いします。
「必ず直面する介護の問題。誰しも親の介護やパートナーの介護、そして自分自身の介護について向き合わないといけない時が必ずやってきます。その時のために今からできること、手を打てることがあります。そのために僕たちがこういうあたらしいカタチで頑張っているということを知っていただき、アピールする努力を続けていきます。
介護業界で働く人が少なくなり、施設も減り、そうなったときに大切な人を任せたいと思える場所がどれだけあるか。
選ばれる場所づくりを進めながら、この想いに共感し一緒にいてくれる仲間も大募集中です!
新しい風、新しい波を起こしてどんどん盛り上げていくような仕組みが必要ですし、その風を受け入れてくれる地盤がこの豊岡市や但馬にはあると感じています。
この恵まれた環境を活かして、私も介護以外の分野を更に切り開き、みなさんと協力し合い、豊岡市、そして但馬地域を盛り上げていきたいと思っています!」
取材を終えて
“言葉は人を作る”というフレーズを聞いたことがあります。
秋山さんから発せられる言葉の中に、社会や何かを責めたりするようなネガティブなワードは一切登場せず、とても謙虚に、そして温かな意志を持った言葉で語ってくださっていたのが印象的でした。
「たくさんの方の協力のおかげで…」とおっしゃっていましたが、それは言うまでもなく秋山さんのお人柄があってこそ。秋山さんだから周りに素晴らしい方々が集まって来られるのだなと感じます。
介護の未来、地域の未来、子どもたちの未来といった大きな視点と
そこで働く方の環境、利用者さまの個別のニーズ、ご自身の想いといった細やかな視点が、
とてもバランスよく“&”で交差され、お話を聞いている私にも秋山さんが描かれている未来がくっきりと見て取れるようでした。そして同世代の方がこうやってチャレンジされている姿を間近で拝見し、私も沢山の勇気を与えて頂きました!今後のご活躍を心よりお祈りしております。
秋山さん、ありがとうございました。
【取材先】
〒669−5305 兵庫県豊岡市日高町祢布789−1 [MAP]