卒業おめでとう。飛んでいけ。

「いつもバスに乗ってくれてた制服の子が花一輪持って乗ってきたら、

あぁ、もう最後なんだな、と思います。」

 

高校生が通学で毎日使うバス。

但東町から出石町までの路線バスの運転手を務める堀江さんの言葉にグッと来ました。

 

「特に言葉をかけるわけではないですよ。

おっちゃんが若い子に話しかけるのも、なんやしね。

でも、心の中では、『卒業おめでとう』って言ってます。」

そう話してくれた堀江さんの思いは、私にも届きました。

 

 

こんにちは。

城崎温泉の写真屋に大阪から嫁ターンしてきて、12年。

市民ライターの井垣真紀です。

 

 

「18歳までしか子どもと一緒に暮らせないよ。」

と先輩ママに言われたことがあります。

衝撃でした。

私は実家から大学に通っていたし、

豊岡市に暮らす今は、自分の子どもはまだ小学生。

正直言って、ピンときませんでした。

 

でも、豊岡で暮らす多くの若者は、

高校卒業と同時に、進学や就職で豊岡を離れます。

通える範囲に進学先が少ないこと、

そして、都会に憧れる気持ちもやっぱりあるのかなぁと思います。

 

長女ももう11歳。

あと7年で出て行くんですよね。

そんな日がくるんですよね。たぶん。

 

 

今日は、豊岡市の「わかもの巣立ち応援プロジェクト」のお話です。

このプロジェクトは、去年始まりました。

わかもの巣立ち応援プロジェクト2018

去年の春、高校の卒業式に合わせて町のあちこちに貼られたメッセージポスター。

ポスターのモデルはみんな、豊岡の人です。

漁師さんや映画館の人、お店の人などが、

豊岡を巣立っていく若者にメッセージを送りました。

「町のみんなが君たちを応援してるよ!」

「いつかは戻ってきたい、そう思ってもらえる町づくりをするよ!」

そんな思いを伝えたくて豊岡市が企画した「わかもの巣立ち応援プロジェクト」です。

 

 

そして、今年も。

高校の卒業式に合わせていろんなメッセージポスターが貼り出されました。

ポスターに登場する人たちがどんな人たちかお会いしたくて、

ポスター撮影に同行させてもらいました。

 

 

 

それでは、

今年新たに作られたポスター全11枚を撮影エピソードを交えて紹介していきます!

①全但バス

冒頭の、全但バスの運転手の堀江さんも、

ポスターに登場してくださったモデルのひとりです。

全但バスは、兵庫県北部の但馬地域を走るバスです。

豊岡市の路線バスは、全て全但バス。なくてはならない市民の足です。

 

全但バス 堀江幸人さん

卒業して豊岡を出て行く子どもたちに何かメッセージを送るとしたら?

と言う質問に、

「何か言えるような立場じゃないし…。

でも、『3年間ご乗車ありがとうございました!』…ですかね。」

「卒業した子が運転する車とすれ違ったりすると、あぁ、免許取ったんやな。と思ったりしてね。」

 

堀江さん自身も高校を卒業後、京都の学校へ。

そのあと京都のホテルでコックさんをされていたそうです。

「消極的だった自分が、都会に出て変われた気がします。

だから、自分の子どもにもやっぱり一度は外に出て欲しい。」

 

堀江さんは結婚を機にUターン。

撮影前日は堀江さんのお父様のお誕生日だったそうで、

「チョコレートケーキを作りました。家族の誕生日は、絶対に私がケーキを作るんです。」

そう話してくださった堀江さんの笑顔はとても幸せそうでした。

 

全但バス

②そば庄

そば庄 川原一郎さん・周子さんご夫妻

一郎さんは「そば庄」の三代目。

小学生の頃からずっと野球一筋。キャッチャーです!

大学まで野球をさせてもらったから、

あとは蕎麦屋を継ぐために西宮で3年修行をしてからUターン。

 

家業を継ぐのなんかいやだ!って思わなかったんですか?

って意地悪な質問をしたら、

「それが、思ったことないんです。

生まれた時から蕎麦屋だったし、継ぐことは当たり前だと思っていたから。」

と、一郎さん。

 

ついてきた「こんな幸せ」には、

ポスターに一緒に写ってくれた可愛い奥さんだけじゃなく、

おふたりの間に生まれた4才と7才のお子さんも含まれています。

この日はお姉さんが遊びに連れ出してくれたそうで、不在で残念でした。

ご両親である二代目ご夫妻と一緒に家族4人で経営されています。

一郎さんは、毎日お蕎麦を食べるそうです。

日々、新しい料理ができないか考えているんですって。

季節によって、そば湯に柚子を忍ばせたり、いろんな挑戦をされています。

でも、一番好きな食べ物は?と聞くと、

「カレー!!」

と、一郎さんではなく、

後ろにいたお母さんとお嫁さんが口を揃えて教えてくれました。

ご家族の仲の良さが、お店の居心地の良さですね。

 

そば庄

 

 

さて次は。

こんな山道を上がってどこに行くんでしょ?

場所は竹野町の山。

新しい形で林業を営まれる皆さんの撮影です。

 

③NEXT GREEN 但馬

Next Green 但馬 鎌内克典さん・竹平裕貴さん・名城千鶴さん

 

「一度は故郷を離れた方がいいと思うけど、出て行くまでに、豊岡の好きな景色を見つけておいて欲しいなぁ。」(名城さん)

 

林業に女性が!

それだけでもびっくりしたのに、

名城さんはなんと、3人のお子さんのお母さんでもあります。

「子どもも3人産んだし、自分の好きなことをさせてもらっていいかな、と思ったんです。」

とは言え、まだまだ子育て真っ最中。

この日も早朝からお弁当を作って出てきたそうです。

旦那さんの手伝いでなく、自分のやりたい仕事。

それが山の仕事。かっこいいです!

 

名城さんも高校を出て神戸へ。

都会にいるときには、山がとても恋しくなったそうです。

「山の形がね、違うんです。但馬の山はまるっこくて可愛いんです。」

「季節の匂いを感じながら生きていきたい。」

という名城さんから聞く山の話はとっても魅力的です。

山仕事で拾ってきたものを子どもの工作の材料にしたり、家族で山に入ることもあるそうです。

山のこと、もっといろいろ教えて欲しいです!

 

 

NEXT GREEN 但馬

 

 

④平尾商店

平尾商店 平尾健一さん・平尾久枝さんご夫妻

日高西中学校の前にある駄菓子屋さん。

残念ながらこちらの撮影には同行できませんでした。

 

日高西中学校の卒業生で市民ライターの飯田勇太郎くんに思い出を聞きました。

 

 

バス通学をしていた勇太郎くんは、

部活が終わってバスが来るまでの間、いつもこのお店にいたそうです。

夏はアイスクリーム、冬は肉まん、あんまんがあって、

少ないおこづかいでたまに買っていたけど、

何も買わなくてもいさせてくれたそうです。

中学生時代の大切な居場所だったんですね。

それから18年。

このポスターのおっちゃんとおばちゃんは、当時の雰囲気そのまま!

と話してくれました。

おばちゃんはこんな笑顔で迎えてくれて、

おっちゃんはこんな感じで。

おっちゃんしかいない時は、ちょっと緊張してお店に入ったって。

 

このポスターに出てくれた人は、町のみんなの代表。

育ってきたこの町で関わってきた人みんなが、

それぞれの思いで巣立つ若者の応援をしているんですね。

 

 

豊岡市内の高校の先生と生徒もモデルに

そして、豊岡にある高校全部行きましたよー!

どの高校も初めて行ったので、ドキドキ。

 

⑤近畿大学附属豊岡高等学校

近畿大学附属豊岡高等学校 寺谷信人先生と生徒のみなさん

「やりたいことをやるのが難しい時代だと思うんです。

でも、出来ない理由を挙げるのではなくて、出来る方法を考えてあげられる大人でいたい。

みんな、いろんな環境にいるけど、だから無理、って言うんじゃなくて。

環境を自分で変えられる人になって欲しいんです。」

そう熱く語る先生の言葉に深く頷きました。

 

私も、子どもが「やりたい」と言ったことはできるだけやらせてあげたいです。

都会と離れていることや、親の収入が原因で無理なこともいっぱいあるんだろうけど、

だから無理、で終わるんじゃなくて、

やれる方法を一緒に考えてあげられる大人でいたいです、私も。

 

 

⑥大岡学園高等専修学校

大岡学園高等専修学校 折戸宏次先生と生徒代表

 

山口県から移住してきた先生の言葉です。

「豊岡は、雪は嫌だけど、海がきれいで食べ物がおいしいですよね!

豊岡を出て行った生徒のことは、やっぱりいろいろ心配です。」

 

 

学校終わりで急いで特急に乗って、

3時間かけてコンサートに行くほど好きなアイドルがいる。

という生徒さんの話に、

東京から来たライターさんが、

「仕事で会ったことがあるよ。」

と言うと、

「きゃー!やっばーい!」と大興奮。

モデルの依頼、受けてよかったね。

そう。一歩踏み出せば、世界は広がるんだよ。

 

⑦豊岡総合高等学校

豊岡総合高等学校 原一尚先生と生徒の皆さん

 

「『高校時代が一番楽しかった!』なんて言って欲しくないんですよ。

そう言ってくれる気持ちは嬉しいですよ。でも、そんな生き方して欲しくない。

今が一番楽しい!って言って欲しいんです。」

 

先生!

わかります!

私、今が一番楽しいです!

子どもにもそう思って欲しいから、

おばあちゃんになっても、そう言いたいと思っています。

 

先生は、みんなが高校を出るまでのことだけ考えてるんじゃないんですね。

みんなのこれからずっと、を考えてくれてるんですね。

 

 

 

⑧豊岡高等学校

豊岡高等学校 中西純一郎先生と生徒の皆さん

 

「部活などで、先輩にはすごくお世話になりました!

頑張って来て欲しいです。そして、次は僕らの番だ!と思います。」

と話してくれた、しっかりした2年生。

今一番、興味あるものはなに?と聞くと、

「◯◯物理学です!」

〇〇は、忘れた(笑)。初めて聞いたので。

私には全くわからないけど、すごいなー!

好きなもの、興味があるものがあるって本当に素敵!

 

私は、したいこと、興味のあることがなかなか見つからなくて、

それが苦しかったなぁ。

高校卒業までに見つけられなかったです。

 

⑨出石高等学校

出石高等学校 荒木美那先生と生徒の皆さん

鳥取出身の数学の先生。

写真からも伝わる通り、とっても楽しい先生でした。

生徒との関係が、姉と弟みたいな。

「いつでも帰っておいでー!私がいるから!」って。

 

そして、出石らしく蕎麦屋でアルバイトをしてるという生徒のおふたり。

「蕎麦、最高!特に、新蕎麦の手打ち蕎麦が最高!」

と新蕎麦の美味しさを熱弁してくれました。

テスト終わりで、ちょっと贅沢に友達とお蕎麦を食べに行ったりする。

って。

すごい!テストの打ち上げが出石そば!

渋い!

どこに行っても、お蕎麦の味を思い出すんだろうな。

 

 

⑩日高高校

ここは、病院ではありません。

看護師の資格、介護福祉士の資格を取るための高校です。

教室に入らせてもらって、びっくり!

患者さんの役をしてくれる人形も置いてありました。

 

ここに通う生徒さんたちは、

ほとんどの人が中学生の時にこの進路を決めた、ってことなんですね。

はー。すごいな。

日高高等学校 看護専攻科長 中村典久先生 福祉科長 高附永吉先生 と生徒の皆さん

 

「この学校で勉強してきた子は、誰にも負けない実習を積んできています。

だから、卒業は今までの夢を叶える時なんです。」

 

他市から寮に入って勉強しているという生徒のおふたり。

おふたりとも、看護師になることが子どもの頃からの夢だったそうです。

「実習は本当に大変!だからこそ、社会に出た時に自信を持って頑張れると思う。」

幼い頃からの夢に向かって、確実に歩いてこられたんですね。

 

⑪クラーク記念国際高等学校豊岡キャンパス

クラーク記念国際高等学校豊岡キャンパス 冨田健治先生と生徒の皆さん

 

「それくらいの気持ちで頑張ってほしい。出て行くなら、もう戻ってこないくらいの気持ちで頑張って欲しいんです。」

先生の言葉のように思いますが、実は生徒さんの言葉です。

先生は、「戻ってこいよ!」と言ってました(笑)。

 

先生の話があちこちに派生していくと、

「とみじい、話が長いねん!」と突っ込む生徒。

「そやねん。いっつも長いって言われるんです(笑)。」

先生と生徒らしくないけど、なんかいい関係だなぁ。

遠慮なく会話をしているけどお互いの愛情を感じました。

「卒業した生徒が、呑みに行こう!って誘ってくれるんです。」

って嬉しそうに話してくださった先生。

卒業してもいつまでも続く関係。ステキですね。

 

巣立ちのとき。

私が住む豊岡市の中の城崎町には、中学校までしかありません。

中学生までは、登下校時に挨拶を交わしていた子たちが、

高校に入るとほとんど見かけなくなります。(朝早く登校し、遅くに帰宅するんだと思います。)

見かけなくなったなぁと思っていたら、

いつの間にか町を出ている、そんな感じです。

 

「えー!もう大学生になりなったん?」

「そうかぁ、もう働いてるんやねぇ。」

見かけなくなった後、そんな風に会話に出てくることもあります。

へぇー!あの子が!もう!

って。

 

そんな時、ふと心配になります。

生まれた時から自分を知ってくれてる人がいっぱいいる町で育って、

町を歩けば挨拶を交わすのが当たり前で。

そんな毎日を過ごしてきたのに、

人はたくさんいるけど知らない人ばかりの街で、大丈夫かな。

ちゃんとご飯食べてるんかな。

悪い人に騙されへんかな。

そう考え出すと、

我が子が出て行く時のことまで想像が広がって、

いっぱいいっぱい心配になります。

 

でもやっぱり、

行かないで。とは言いたくない。

 

頑張っておいで。

広い世界を見ておいで。

気をつけて、行っておいで。

 

そして、

私たち大人は、子どもたちがいつでも帰ってこられる町にしておかないといけない。

そう思います。

仕事があって、家庭が持てて、豊かで安心して暮らせる、あたりまえの幸せがある町に。

私たちも頑張るね。

 
 

卒業おめでとう。飛んでいけ。

 

 

2017年のポスターはこちらから

若者よ飛んでいけメッセージの紹介

こちらもぜひ。

親から子へのサプライズ卒業式~わかもの巣立ち応援プロジェクト2018

この記事を書いた人

井垣真紀

関西を中心にフリーアナウンサーとして活動したのち、2006年、城崎温泉にある写真スタジオに嫁ぎ、移住。
現在は、三姉妹の母でフォトグラファー。
マタニティフォト、ベビーフォト、ブライダル撮影、また、舞台撮影や取材撮影なども。
たまーに、アナウンサーの仕事も。
週に二回はスタジオ併設のカフェも営業しています。

温泉があって、食べ物が美味しい。山があって海もある。雪も降るし蛍も出る。
豊岡のまちは住めば住むほど好きになります。ここでの暮らしぶりをお伝えできれば。

イガキフォトスタジオ ☎︎0796-32-4151

http://www.igakiphoto.jp/

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