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豊岡出身・市役所担当メンバーに聞く〜豊岡演劇祭2023〜

豊岡出身・市役所担当メンバーに聞く〜豊岡演劇祭2023〜

©トモカネアヤカ 提供:豊岡演劇祭実行委員会

こんにちは!

広島県福山市出身、2023年6月から豊岡に越してきた、地域おこし協力隊の佐藤です!現在は、豊岡演劇祭のコーディネーターをしています。

皆さんは「豊岡演劇祭」をご存じでしょうか?

豊岡市の「深さをもった演劇のまちづくり」リーディングプロジェクトとして2020年に始まりました。演劇やダンスを中心とした舞台芸術のフェスティバルです。

豊岡演劇祭2023は、9つのエリアで111プログラムを実施

第3回目となった豊岡演劇祭2023は2023年9月14〜24日に開催されました。昭和初期のモダン建築が数多く残る豊岡の市街地から、温泉街のある城崎といった豊岡市の特徴的な7エリアに加えて、養父市、香美町も演劇祭の会場に。

合計111プログラム を実施し、来場者数は2022年を上回る23,647人(延べ)となり、 過去最高を記録しました。リアルな様子が分かるダイジェスト映像も公開中です:https://youtu.be/VsYVkraUlu0

地元メンバーから見た”豊岡演劇祭”の存在って?

実のところ、豊岡が地元である方にとって”豊岡演劇祭”ってどういう存在なのでしょうか?

今回インタビューさせていただいたのは、演劇祭事務局を担当している市役所職員のメンバーであり、豊岡出身の2人。

橋本さん

豊岡市竹野町出身。高校卒業と同時に都市部に出て、2021年にUターン、以来市役所職員として、演劇祭事務局に関わっています。

太田さん

豊岡市出身。前回の演劇祭は友人の手伝いで、フェスティバルナイトマーケットに関わっていましたが、豊岡演劇祭2023では、市役所で演劇祭事務局として関わっています。

地元が何か新しいことに挑戦しようとしていっている

Q. 事務局に入る前、豊岡演劇祭について知っていましたか?

橋本さん:演劇祭の取り組みは、都市部で働いていたころから耳には入っていて、地元が何か新しいことに挑戦しようとしている、という感覚は伝わってきていました。

Uターンの選択肢が出てきたとき、テーマに関わらず新しいことをやっている場所であれば、楽しく働けそう、と思ったのは一つありました。実際、演劇祭で関わるメンバーは移住してきたメンバーが多く、様々な新しい価値観に触れながら働くのは刺激的だと感じています。

太田さん:関わるまでは豊岡演劇祭の存在自体を知らなかったので、2022年の演劇祭で初めて観に行きました。演劇を今までみたことがなかったので「これが演劇なのか」という感覚を覚えました。(通っていた高校には)演劇部もないし、演劇だと認識して観たのは演劇祭の作品が初めてでした。

初めての演劇、観劇のハードル

範疇遊泳『バナナの花は食べられる』 ©️3waymoon 提供:豊岡演劇祭実行委員会 

Q. 豊岡は普段観劇の機会が多くはない場所。観劇にハードルを感じる方も少なくないと思います。実際、初めての観劇の体験はどうでしたか?

太田さん:演劇は、人間が舞台でやるイメージがありましたが、演劇祭で初めて観た作品は、劇中に映像も使われていて、とっつきやすく感じました。

今年も公式WEBの写真を見て「面白そう」と思ったものを観に行きました。コメディーが好きなので、コメディー分野を探して観に行きました。

橋本さん:元々「演劇」に関心がない人にとって、お金を払ってみるのはハードルが高い面もあると思います。

私自身、自分が事務局ではなかったら、行ってなかったかも(笑)。演劇に詳しくない私でも、行ってみたら満足度が高いと感じる演目ばかりだったので「まず一回観に行ってみる」ハードルが超えられたら、もっとたくさんの人に観てもらえるのにな、と思います。

近所でやっているから観にいこう

橋本さん:今回は、地元の竹野でやっていた『スーパーリラックス』(海辺の街を歩きながら展開していく回遊サーカス公演)を家族と観に行きました。

気軽に見れて楽しい演目で、自分にとっては日常の中にある街並みを活用していたのも魅力でした。近所でやっているから観にいってみよう、という理由もありました。

豊岡ならではのロケーションを生かした舞台の魅力

世界劇団『零れ落ちて、朝』-Toyooka edition- ©トモカネアヤカ 提供:豊岡演劇祭実行委員会

Q. 幅広いエリアに会場があるので、まずは地元や行きやすい場所に遊びに行く感覚で、演劇祭にも参加してみてほしいですね。他に、今回の演劇祭で印象的だったプログラムはありましたか?

橋本さん:竹野浜の広さと砂で作られた舞台を活用した世界劇団さんの公演も印象的でした。ロケーションを生かした舞台、もっと他にも観てみたいなと思いますし、普通の劇場ではないところでやる、が豊岡演劇祭の特徴ではないでしょうか。

「演劇祭ってなんだ?」通りすがりで参加できる

水田雅也『シンボル玉入れ』 ©トモカネアヤカ 提供:豊岡演劇祭実行委員会

太田さん:*『シンボル玉入れ』というプログラムは、地元の方の参加率が高かったです。

アイティ前芝生広場に玉入れの塔がたてられ、写真の通り、シンプルに玉入れをする演目です。高校生など若い方たちや、「演劇祭ってなんだ?」と思っている通りすがりの方々などが参加してくれ、一体感を感じるプログラムでした。

(*玉入れに使われた”シンボル玉”は、アーティストの水田雅也さんが、豊岡滞在中に地域の色々な場所を訪ね、地域の方たちとお話ししながら制作しました。)

アーティストと地域の方の交流

誰でも交流できる多目的スペース『ミーティングスポット』で行われたイベントの様子 ©トモカネアヤカ 提供:豊岡演劇祭実行委員会

Q. 豊岡演劇祭では毎年新しい取り組みがされていますが、2023年に印象的だったことはありますか?

橋本さん:今回初めての取り組みだった*ミーティングスポットです。個人的には、企画段階では「ミーティングスポットってなんなんだろう?」という感覚でした。

いざ始まってみると、いけば誰かがいて、どの演目が面白いか教えてもらったり、アーティストと地域の方の交流が生まれたりして、自分自身もしっかり楽しみました。

(*豊岡エリアと江原エリア に設置。1000人以上が訪れた。)

演劇祭をきっかけに「豊岡を好きになってほしい」

Q. 豊岡で生まれ育った二人にとって、「豊岡演劇祭」という場をどう感じますか?

太田さん:演劇祭をきっかけに「豊岡に来てほしい、豊岡を好きになってほしい」という想いがあります。演劇の有無に関わらず、「豊岡」は魅力的なまちです。演劇をきっかけに、魅力を感じてもらえたら嬉しいし、演劇祭が観光のきっかけになったらいいなと思っています。

「こんな生き方もあるんだ」人生の選択肢が増えた

『フェスティバルナイトマーケット』 ©トモカネアヤカ 提供:豊岡演劇祭実行委員会

太田さん:個人的には、様々な人と関わる機会によって、新しい価値観を知れることが豊岡演劇祭の魅力の一つだと感じています。

私自身も豊岡の出身ですが、豊岡から出たい欲を持っている若い人は多いと感じます。それは、豊岡という地域へのネガティブな感情ではなく、人生の選択肢を今よりも増やしたい、と感じていることが一つ理由にあるのでは?と思っています。

豊岡ではない場所で生きてきた人たちと出会うことで、人生の選択肢を増やすことができますが、今まではそのために、自分が外に出ていくしかありませんでした。演劇祭のようなイベントがあることで、豊岡にいながら、様々な人に出会える機会が生じていると思います。

例えば、私は高校生まで「定年まで一個の職業」「名前のついた職業」に就いている大人しか知りませんでした。

演劇祭を通じて、関係者を含め、移住者や他の地域から来た人と接していく中で「こんな生き方もあるんだ」と、人生のプランを自分で組み立てたり、選択肢を自分で作ったりすることもできることを知りました。

一つの場所で生まれ育つと、当たり前のことを当たり前としか思えない

橋本さん:一つの場所で生まれ育つと、知識も経験も限られているし、当たり前のことを当たり前としか思えない。私は、豊岡の外から来た人が豊岡の「これってすごい」を教えてくれるのが嬉しいなと思います。

私にとって「ただ川が流れているだけ」の場所を、「ここ素敵だよ」と都会から来た演劇祭のメンバーが逆に地元の魅力を教えてくれました。身の回りに豊かな自然があることは自分にとって当たり前でしたが、それが美しくて魅力的だということが新しい発見になり、さらに地元が好きになりました。

自分にとって当たり前の場所が「素敵な絵に見えた」

堀川 炎『窓の外の結婚式』 ©️3waymoon 提供:豊岡演劇祭実行委員会

橋本さん:竹野の出身なので、アーティストの方に竹野の(海辺の)岩場が「素敵な絵に見えた」と言ってもらったときは、自分のことを褒めてもらっている感じで(笑)。こんな風に、演劇祭をきっかけに、地元の人の地元についての見方が変わるかも、という感覚があります。

豊岡はアクセスが悪いのに、これだけの人が遊びに来てくれる、観に来てくれることが単純にすごいな、と。城崎温泉というスポットは有名だけど、その一つの目的だけだと足が遠のいている人もいるかもしれません。一つの目的では行かないところも、二つの目的があると行ってみよう、となると思います。演劇を目的に来てもらって、豊岡の観光スポットについても知ってもらう、流れができていると感じます。

市民が楽しんでこそ、観光客も楽しい場に

Q. これからの豊岡演劇祭で実現していきたいことはありますか?

橋本さん:市民が関われる形を増やしたいです。市民が楽しんでこそ、観光客も楽しい場になると思っています。

今年は、竹野にある宿泊施設を、オフシーズンであるにも関わらず、開けていただき、多くのアーティストや関係者で使わせていただきました。そんな風に、地域の宿泊施設や飲食店の方にもビジネスチャンスとして、使っていただけたら嬉しいなと。

太田さん:但馬地域で「演劇」を楽しめて嬉しい、演劇文化を知るありがたい機会だった、との声もある一方で、演目の選択肢を増やしてほしい、との声もたくさんありました。

お子さんも気軽に参加できるもの、参加型で楽しめるもの、など、今後市民の方の声を投影した作品が増えていったらいいなと思っています。

【編集後記】

私自身は、豊岡演劇祭がすでにある場所に後からきたのですが、自分が生まれ育った街に「舞台芸術のお祭り」が生まれたことは、地域の方にとってどういう意味があるのか気になっていました。

今回、地域視点と運営視点、どちらの目線も持ち合わせているお二人にインタビューをさせていただき、参加する立場や目線によって「豊岡演劇祭」の持つ意味の広がりを実感しました。地元の良いところを再発見できる場であり、普段出会わない出会いをもたらす場であり…

豊岡演劇祭に参加する方々は、地域の方々、アーティスト、スタッフ、目的もバックグラウンドも様々で、持って帰る意味も多様に広がっている。そんな色々な想いや体験が入り混じる空間が、今年度の豊岡演劇祭2024でも面白く育っていったらいいなと思います🌱

 

この記事を書いた人

佐藤 令奈

豊岡演劇祭コーディネーター。
広島県福山市出身、大学入学を機に上京し、フィリピン語やキャリア教育を学んだ後、IT業界で働いていました。2023年6月に地域おこし協力隊として豊岡に越してきて、「演劇」「教育」「多文化共生」のフィールドで活動しています。

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