豊岡在住vol.1 履きもん
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り住み、当時一緒にスタッフとして働いていた豊岡市出石町出身の美紀さんと出会い、2人で竹野でダイビング改装し、「民宿ねこざき」をオープン。ダイビングを求めて、全国からお客さんが来るようになった。「繁忙期にはアルバイトにも手伝ってもらいますが、基本的には2人で出来ることをやってます」竹野の夏はえげつない程人が多い。海水浴シーズンは浜辺いっぱいに人が集まり、近隣の駐車場も旅館も大賑「冬は朝から潜ってお昼にカニを食べる方も多いですよ」民宿の横の小さな坂を下り、焼杉の壁が連なった海岸漁船が帰って来た。その上をぐーるぐーるとトンビが旋ひんやりとした市場の中に漁師さんたちの声が響く。鯛が泳いでいる。「おはようさん。この前はありがとうなあ」もの日常がみえた。てないといいな。車を降りて冷たい海風に首をすくめながらも、遠く海の向こう、雲の切れ間からみえる青空にホッとした。かれている。よく見ると〝ざ〟の濁点が猫の足跡になっている。猫が好きなのかと尋ねると、そうではないらしにどんどんのめり込み、ダイビングインストラクターの竹野の朝。昨夜の天気予報では曇りだった。海が荒れい外観。白い街灯看板には〝ねこざき〟とひらがなで書い。ダイビングをする人にとって、海の天候は重要で、海が荒れる日は潜れない。しかし、竹野から少し北に伸びる猫崎半島という半島が風を遮るので、西側が荒れている時は東側で、東側が荒れている時は西側で潜ることが出来る。天候に左右されにくく、ダイビングに適したこの地形に感謝を込めてこの名前にしたそうだ。大阪府出身の陽介さんがダイビングを始めたのは21歳の頃。それまで特に趣味もなかったが、何度も通ううち資格を取った。その後豊岡市のとなりまちの香美町に移カラカラカラと玄関が開いて、陽介さんと美紀さんが外へ出てきた。「おはようございます、寒いですねぇ」竹野海水浴場のすぐ目の前、古めかしショップを始めた。そこから少しして、元民宿の建物をわいだ。一方冬は、浜辺も街中も閑散としている。とはいえ、冬はカニ料理目当てのお客さんも多い。それに、ダイビングは一年を通して楽しめるので、季節によって変わる水中の景色を観に何度も足を運ぶ方も多いそうだ。沿いに出て、市場に向かう。道脇に並ぶリヤカー、錆び錆びの自転車。潮風で汚れた窓をシャワーホースで掃除してる人がいる。沖からバタバタとエンジンを鳴らして回している。その数は市場に近づくほど増え、屋根にもたくさん留まっている。おこぼれの雑魚を狙っているのだろう。姿は見えないがどこからか猫の声もする。足下の巨大な水槽には水揚げされたばかりのホウボウや「昨日雨だったから今日はあんまりよう獲れんでなあ」と、漁師さんと田中さんたちが会話するようすに、いつ港町で暮らす

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